趣旨
日本のものづくり企業は、東日本大震災や欧州債務危機といった不確実性要素の多い状況下で一体、何をすべきなのだろうか。製造原価や管理費などの削減で利益を確保するのもいい。しかし、縮小路線を歩んでいては中長期的な成長につなげることは難しい。元技術者で、現在は多くのメーカーで技術経営支援を手掛けるコンサルタントである著者は、「自社の技術をマネジメントすることで未来は切り開ける」と主張する。そのための具体的な手順は、(1)自社技術の資産価値を正しく理解する、(2)新しい技術の獲得を戦略的に企画する、(3)その技術を効果的、効率的に自社開発する、(4)自社で短期間に開発できない場合は外部から取り入れる、(5)特許を獲得しながら事業展開には最大限に活用する、(6)技術の人材ポートフォリオを構築する、ということだ。本連載では、これら6つの要素を例示や図解を多く使用しながら解説していく。
井上 潤吾(いのうえ・じゅんご)
ボストン コンサルティング グループ(BCG)シニア・パートナー&マネージング・ディレクター
東京大学工学部を卒業し、同大学工学系研究科修了。米ペンシルベニア大学経営学修士(MBA)。日本電信電話株式会社、BCGアムステルダムオフィスを経て現職。BCGインフォメーションテクノロジー・プラクティスの日本リーダーで、テクノロジー・メディア・テレコミュニケーション・プラクティスのコアメンバー。専門分野はハイテク、通信、金融、電力、新規事業、提携、研究開発、ポートフォリオ・マネジメント、営業改革、IT戦略。著書に『守りつつ攻める企業』(東洋経済新報社)など。