「やったね。20万台だ」。ホンダの、「ハイブリッド車の世界累計販売台数が80万台を達成」という発表を見て、80万台で喜ばず、20万台で喜んだ私はヘソ曲がりだろうか。「80万台達成」の発表資料を拾い読みすると、「2010年12月60万台達成」「2011年12月80万台達成」。この差が20万台。1年で20万台だ。

 へそ曲がりは認めるが、同感してくださる方はホンダの中にもたくさんいらっしゃるはずだ。20万台はそれほど大切な数字なのである。

 ホンダは2009年に「インサイト」を出したとき、1モータのハイブリッドシステムを開発した。このとき、多くの部品を部品メーカーに発注した。電池を造る三洋電機(当時)、インバータを造る三菱電機、モータコアを作る黒田精工、DC-DCコンバータを造るTDKなどの一次協力メーカーから2次、3次協力メーカーまで、多くのメーカーに開発してもらい、生産設備を構築してもらった。

 そのときの約束が、「年産20万台」だった。「年産20万台で量産効果を出して単価200万円を達成」というわけだ。部品メーカーはそれを信じて開発投資をし、設備投資をした。これが達成できなくては洒落にならない。

 その後、「CR-Z」「フィット ハイブリッド」「フィット シャトルハイブリッド」「フリード ハイブリッド」「フリードスパイク ハイブリッド」。ホンダは立て続けにハイブリッド車を発売してきた。すべて共通のハイブリッドシステムだ。

 このシステム、「モータ運転でもエンジンを止めないので、燃費改善幅がいま一つ」などと言われることがある。それでも1.3~1.5Lクラスのエンジンには、無駄にハイテクでなく良くできたハイブリッドだ。しかしホンダはこれ1本で行こうとは思っていない。既に2モータのハイブリッド車を試作しているし、デトロイトモーターショーに出した「Acura NSX」はDCT(Dual Clutch Transmission)と組み合わせたハイブリッド車である。

 ホンダはそれらを世に出す前にやることがあった。今の1モータハイブリッド車を年に20万台売ることだ。20万台を達成していないのに次のタマを出せば、投資してしまった部品メーカーに何を言われるか分からない。部品メーカーが「ホンダはうそつかない」と思って協力してくれなくては、これからの開発は一歩も進まなくなる。

 こんなに車種を出しまくったのは、もちろんハイブリッド車を普及させるためである。ただ、「何とか20万台を達成しなくては」とカンフル剤を投入した側面があったことは否定できないだろう。

 めでたく20万台達成。これでホンダのハイブリッド車は次の段階に進める。