昨年、「本当に奥数を学ぶ必要があるのか」という議論が全国的に巻き起こり、大きな話題を呼んだ。大手のポータルサイトでは、それを議論する特別のサイトまでも設けた。例えば、ポータルサイト「shou.comでは、1月30日までに5106人が投票しているが、そのうち奥数に反対する人は3458人、すなわち約7割ぐらいの人が反対していることになる。

反対の理由
・多くの時間が潰されて、子供の天性を無くす
・受験のためだけ
・難しすぎ、大人もできない、子供を苦しめるだけ
・天才的な学生には向くが、一般の学生には向かない
・お金儲けを考える人のビジネスとなった
・こどもの知力には良いと言えない
・学校の負担が重い

賛成の理由:
・学校での教育レベルには満足できない
・問題を解くことで成功体験を味わう
・絵やピアノというような稽古と同じ
・数学の成績アップに役に立つ
・進学に役に立つ
・早い内に数学に向くかどうかを判断できる

 教育の専門家や社会の有識者は、奥数は極一部の数学才能が突出している学生には向いているが、多くの学生は沢山の時間を使って学ぶ必要がないだろうと指摘した。奥数の勉強をさせられて、中国の子供たちはかわいそうだ、といった認識が多かった。

創造性は促進されたか、阻害されたか

 上記のサイトの紹介によると、奥数自身は問題がない。活用すれば、子供の想像力や思考力を上げるはず。ただ、それが中国では正常の範囲を大きく超えて、遥かに「活用」されるようになったので逆効果となり、大きな問題が起きたとしている。

 奥数は中国教育の理念や文化の縮図とも言える。基本的に、「詰め込み教育」は中国教育システムの特徴である。中国の学生は世界中のどこに行っても、「試験が上手」という評判があるという。実際、数学五輪だけではなく、物理五輪、化学五輪などにおいても、近年、団体1位は殆ど中国学生に独占されている状況である。そういった優れた成績から、中国の国内では、中国学生の数学力は既に世界でNo.1だ、という声が上がっている。しかし、専門家からは否定的な意見がある。

 中国の報道によると、数学のノーベル賞と言われるフィールズ賞の受賞者、ハーバード大学終身教授の丘成桐(Shing-Tung Yau、中国香港の出身)氏は、中国では数学が好きで奥数を学ぶのではなく、名門大学に入ることを目的としているので、身にならず、逆に子供の創造性を阻害すると指摘した。

 実際に、欧米では本当に数学が好きだから数学五輪に参加した学生が多い。そのため、将来も数学の道に歩む人が比較的多い、数学五輪のメダル受賞者には、フィールズ賞を受賞する人も少なくない。しかし、中国のメダル受賞者からはまだ一人もフィールズ賞を受賞した人はいない。