春節(旧正月)休暇も終わり、上海、北京など都市部のオフィスでは今週から通常通りの勤務体制に戻る。ただ、EMS/ODMなどの工場では、中国全土に帰省した従業員の職場復帰に時間がかかるため、本格的な始動は2月中旬ごろになる。何しろ勤め先のある上海や広州から列車で20~30時間近く揺られて故郷の省都(県庁所在地に相当)に着き、実家はそこからバスでさらに丸1日、つまり往復だけで5日も6日もかかるなどという人もザラにいるためだ。

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春節を4日後に控えた1月19日の上海駅の様子。地方が豊かになりつつあることを反映してか、身軽な格好の帰省客が目立つ

 中国では春節の帰省に伴う民族大移動のことを「春運」と呼ぶ。今年の春運は1月8日~2月16日までの40日間だが、中国政府の国家発展改革委員会は、2012年の春節期間に移動する人の数がのべ31億5800万人に達すると予想している。中国紙『長江日報』(1月25日付)によると、2001年には同16億6000万人だったというから、10年で倍増したことになる。

 春節はまた、帰省を機に職場を変える人が多い転職の時期でもある。そこでEMS/ODM企業が近年この時期、頭を悩ませるのは春節前後の人手確保だ。ただでさえ職場に復帰する人が少ない上に、大手ブランドメーカーの春モデルや中国で春節や10月の国慶節(建国記念日)と並ぶ大型商戦の一つである5月のメーデー(労働節)商戦向け商品の生産が、春節開けから本格化するためだ。

 EMS世界最大手の台湾Foxconn(フォックスコン=鴻海)社も例外ではない。中国のIT情報専門サイト『天極網』(1月21日付)が消息筋の話として伝えたところによると、フォックスコンでは、米Apple社のタブレットPC「iPad」を生産する四川省成都の工場で、今年の春節休暇をその他の部門の9日間より短い5日間に短縮。3月の発表がうわさされる次世代モデル「iPad 3」の生産を24時間操業で進めているという。上海の業界筋は、「フォックスコンがこうした勤務体制をとるのも、人手不足を補うためだろう」と指摘する。

 頭数の確保を最優先に、採用の条件を緩める企業も少なくない。その一例が「出戻り」の再雇用。EMS/ODM大手ではこれまで、退職した元従業員が再就職を望んでも、規律が緩むことなどを考慮して、1年以内の復帰を認めないのが普通だった。ところが人手不足が深刻の度合いを増した昨年以降、退職後3カ月、早いところでは1カ月で職場に戻ることを認めているという。