海峡両岸経済協力枠組協議(ECFA)の関税の早期引き下げ(アーリー・ハーベスト)項目には、2012年から自動車部品がリストに入り、バンパー、ギア・ボックス部品、ホイール、自動車用照明などの製品の関税率がゼロになる。この結果、中国における台湾部品の競争力が強まるだろう。最近、台湾のある自動車用照明業者が広汽飛雅特から注文を受け、2012年第2四半期から每月4000セットの出荷を予定している。まだリスト入りしていない自動車部品とカー・エレクトロニクス製品項目については、2012 年に重要性を見て次期リスト入りの可否が討論されるだろう。当初は関税低減の対象とはされなかったが、両岸がカー・エレクトロニクス産業の発展を望む状況のもと、双方の補完戦略により、ハイレベル相互訪問が強化される。これにより。カー・エレクトロニクス機器メーカーにおける提携の意向が高まってきている。

(4)日台の長期提携による中国車聯網進出の戦略の提言

 カー・エレクトロニクス製品は自動車のインテリジェンス化のバロメーターである。中国は自動車販売大国ではあるものの、カー・エレクトロニクス産業は全体的に実力不足である上に、企業の規模、自主的なイノベーション、技術レベル、市場開拓の経験においても、日本や台湾の産業クラスタのような相乗効果が形成されていない。

 台湾では近年、経済部のインテリジェント・カー奨励のもとで、知名度の高いデジタル民生機器を扱うICT企業も車載ICT製品とサービスへの転向を志向している。両岸ECFA後の補完戦略導入により、相互訪問と交流の機会が増加したことで、台湾ICT企業の中国完成車と自動車用システムにおける提携の可能性が増してきた。

 台湾にはカー・エレクトロニクス製品の差異化を図れる優れたエレクトロニクス、IT、通信の産業があると言えよう。ECFA施行後、製品開発と応用のチャンスが増加した。また、台湾は桃園、台中、苗栗、台南、高雄に電機産業の基礎が整っており、従来の自動車だけでなく、電気自動車とその部品産業クラスタも形成されつつある。とりわけ、部品設計と製造では強い競争力を持ち、欧米市場でも販売経験を有する。

 台中には、機械産業、工作機械産業、自動車部品産業の企業があり、効率的な工場管理能力と高品質を維持する柔軟な生産管理能力を持っている。工業技術研究院、中山科学研究院、金属工業研究発展センター、車両研究測試センター、資訊工業策進会、交通大学、台湾科技大学、成功大学など台湾の主な学術研究機構は、経済部の委託を受けてインテリジェント・カーなどの研究を進めている。このほか、国際交流として、米国のPATH、Visteon社、ミシガン大学、カーネギーメロン大学などで関連する計画を実施している。

(a)台湾企業と日本企業の長所を生かした提携を

 中国はカー・エレクトロニクス産業の国内ブランド会社がなく、またアフター・サービス・システムもない。ほとんどの企業が国外メーカーのOEM(相手先ブランドによる生産)にとどまる状態にあり、今後の打開が望まれている。

 一方、台湾のカー・エレクトロニクス産業は、車体電子、運転情報、安全支援製品から、徐々に自動車コア制御システムなどの関連電子製品にグレードアップし、インテリジェント・カー、高速道路交通システム(ITS)、周辺環境と新たなサービス・モデルと組み合わせている。今後、自動車トップ企業のバリュー・チェーンから商機を創造し、国際競争力を高めるためにも、中国自動車メーカーでの採用が必要である。

 日本では新サービス・システム・モジュールが新車種、通信プラットフォームの統合に広く応用されて、良質かつインテリジェンスな運転環境ができていることが世界的に知られている。これら3者それぞれの長所を生かせば、提携が成功するだろう。中台、日台の提携を通し中国現地のカー・エレクトロニクス産業を開拓し、新たなサービス・モデルを作り、インテリジェント・カーとともに、海外の各国に輸出すれば、産業の付加価値と競争力が高まり、アジアが世界の分業において重要な役割を担うことができる。同時に、エコと省エネにも貢献することもできる。