2011年に自動車販売台数1900万台を突破した中国は、車両販売・生産世界第1位の座を維持し、2015年には売上高が234億米ドルに達すると見込まれている。2011年1月に中国・台湾間で調印された「両岸経済協力枠組協議」(略称:ECFA)が施行されて以来、両岸間の経済・貿易活動が活発化し、さらに「両岸架け橋計画」により、中国の巨大な自動車市場に対しては台湾ICT(情報通信技術)業界と中国カー・エレクトロニクス業界との交流が促進されている。

 一方、2011年3月11日に発生した東日本大震災により、日本の基幹産業である自動車・電子部品のサプライ・チェーンが分断され、日本企業がアジアにバックアップ拠点を求めたことから、2011年7月に日本・台湾間で投資協定が締結された。日本企業が生産拠点を海外に求める動きは、2011年10月に発生したタイの大規模洪水によって、その後も加速した。

 現在、日本・台湾・中国の3地域間の提携と分業が各界から注目されている。本稿では、カー・エレクトロニクス分野において、ECFA発効後の3者の提携の機会を考察し、提言する。

(1)中国カーエレ産業の成長力と潜在市場力

 中国でも、ICT(情報通信技術)の自動車への応用(カー・エレクトロニクス)が重視されている。その理由には、潜在市場規模が大きいことや、第12次5カ年計画(十二五計画)における応用モデルの推進に合致することなどがある。

(a)2015年に240億米ドルが見込まれる中国カーエレ市場の魅力

 中国では自動車販売台数が年間100万台の勢いで伸びている。2011年の自動車販売台数は1900万台を突破し、引き続き、生産と車両販売の両者で世界第1位の座を維持している。

 北京、上海など沿岸の大都市を中心に、車載ICTの製品とサービスで交通渋滞に対応する動きが広がっている。これに伴い、カー・ナビゲーション機器や先進運転支援システムのニーズも高まっている。商業用車両も、運輸部門の管理と派遣、先進運転支援システムの強化など、さらなる付加価値が期待される。

 また、世界中で新エネルギー車(ハイブリッド車や電気自動車)の導入当初において、全てのユーザーが車体の状況診断、走行の最適化を強く求めることになる。80%の新エネルギー車の所有者が、走行中にメーターで電力供給、自動車用システムの安定性、渋滞状況、充電場所などを確認しており、新システムにおけるデータ表示の電子化が必要とされている。例えば、自動車の表示装置とユーザーのスマートフォンやタブレット端末に同時表示すると、運転者に情報が伝わりやすい。

 工業技術研究院IEKの調査では、2012年の中国カー・エレクトロニクス市場の規模は164億7000万米ドル、2015年には234億3000万米ドルに達する見込みである (図1) 。

図1 中国カー・エレクトロニクス市場予測
縦軸の単位は100万米ドル。出所:工業技術研究院IEK(2011年12月)
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