2012年のデトロイトモーターショーを取材して気づいたのは、センターコンソールのディスプレイが大型化しつつあることです(関連記事)。米Chrysler社が2013年モデルとして発売する予定の「Dodge Dart」は小型車ながら8.4型のタッチパネル付きディスプレイを備えます。電気自動車の米Tesla Motors社の「Model S」は、まるで「iPad」のように大きな17型ディスプレイを据えています。

 こうしたことの背景には、ナビゲーション機能の強化、スマートフォンとの連携などがありますが、もう一つ大きな要因として、2014年にリアカメラの義務化を目指している米国の安全基準があります。後退中に自宅の敷地内などで子供をひいてしまうことを防ぐためにDOT(米運輸省)が求めているもので、2010年3月に提案された内容では、車両総質量4536kg以下の乗用車、ライトトラック、バスなどにおいて、2012年9月までに新車の10%、2013年9月までに40%、2014年9月までに全車が装着することを目指しています。

 NHTSA(米高速道路交通安全局)によれば、後退時の事故によって年間平均で292人が死亡しており、特に子供と老人の比率が高いとします。ライトビークルにおいては、死亡者の44%が5歳以下の子供で、さらに33%が70歳以上の高齢者となっています。義務化はコストがかかる方法ですが、各社はすでに標準もしくはオプションでの対応を始めています。例えば、2013年モデルとしてホンダが2012年秋に発売を予定する新型「Accord」はリアカメラを標準装備、さきほどのDodge Dartもオプションで対応します。対応した車両では、カメラとともにインストルメントパネルの表示部が必要となり、ナビゲーションシステムを備えない車両でも、大型のディスプレイを装着する傾向が強くなっているのです。

 今後はカメラとディスプレイをできるかぎり活用して、リアカメラだけでなく様々なアプリケーションを安価に組み込むことが進むでしょう。例えば、日産自動車は、同社が2011年10月に開いた先進技術説明会で、リアカメラを利用して車線の白線を検出し、運転者に車線からの逸脱を警告するシステムを公開しました。現在、車線の白線検知は、ルームミラー付近に設置した前方カメラを使いますが、後部のカメラでも代用は可能です。また、リアカメラで後側方の車両を検出し、車線変更時に警告するようなシステムも開発中です。

 こうした応用システムが実現すれば、基準をクリアするとともに、新たな付加価値を付与できます。リアカメラの標準装備をきっかけに、新たな安全技術が続々と登場するかもしれません。