2011年は、年初に起こったCPUの不具合によるパソコンの発売遅延に始まり、東日本大震災による国内生産への影響、タイの洪水によるハードディスク・ドライブ(HDD)の生産や流通への混乱と、パソコンや関連機器の供給側にとっては決して良い年は言えなかった。

 また、2011年は年間を通じて需要を喚起するような革新的な技術イベントがあったわけではなかった。さらに、例年であれば夏の“バック・トゥ・スクール”(新学期)など需要が盛り上がる時期でもパソコンが売れなかった。総じて当初の出荷予測を下回った年となった。

 われわれの調査によれば、2011年のIT(情報通信)機器別の出荷予測(第4四半期の実績は集計中)は、液晶モニタが1億7300万台、ノート・パソコン(10.4型以上)が1億8800万台、モニタ一体型パソコンが1500万台、ミニノートPC(10.2型以下)は2500万台となる見込みである。一方、タブレット端末の出荷は、堅調に推移する米Apple社の「iPad2」に加え、2011年末の米Amazon.com社の「Kindle Fire」の投入も寄与し、7300万台に達すると予測している(図1詳細レポートはこちら)。

IT機器別の出荷予測
図1 IT機器別の出荷予測

 2012年のIT市場では、市場動向に影響を与えそうなイベントがいくつか予定されている。

(1)新CPUの出荷が開始され「Ultrabook」が進化する。Ultrabook は、2011年夏から米Intel社が提唱し、すでに2011年秋から出荷が開始されている。画面サイズが14型未満の場合は本体の厚さが18mm以下と、新しいカテゴリの携帯型パソコンとして注目を集めている。さらに、Intel社の次世代CPUの登場が予定されており、さらなる性能の向上、省電力化が期待されている。この新CPUと組み合わせたUltrabookの目標価格は700米ドル未満とされ、一般的な携帯型パソコンの価格帯に迫る。このため、そのスリムな外観やバッテリー寿命の改善も相まって、出荷の増加が期待できる。

 FPD業界にとってはUltrabook対応のための液晶パネルへの薄型・軽量化への要求が高まり、付加価値をつけるチャンスと見ることもできる。13.3型の製品が先行して発売されているが、今後11.6型から15.6型までUltrabookが相次いで登場するだろう。

(2)「Windows 8」の出荷が開始される。「MetroUI」と呼ばれる、タッチ・パネル入力に対して親和性のあるUI(ユーザー・インタフェース)を持った次期Windows OSが2012年秋に出荷されると期待されている(従来の伝統的なUIも残るとされている)。2012年の年末商戦を皮切りに、2013年から本格的な市場への浸透が進むと予測している。ただし、企業においては、今までWindowsの新製品が発売された時と同じように、既存システムやアプリケーションとの互換性検証などで、導入に時間がかかる事例も出てくると見込まれる。

(3)タブレット端末は高精細化へ進み、他のIT機器にも流れが波及する可能性がある。2012年春に出荷が始まると予想されるApple社の「iPad 3」には、従来の1024×768画素(精細度132ppi)から、一気に4倍の画素数の2048×1536画素(精細度246ppi)の液晶パネルが採用されると言われている。iPhoneから始まったApple社製品のディスプレイの高精細化は、Windows対応パソコンとは異なる。自社でOSやiTunesというコンテンツ・ポータルを持つ強みを生かして、映像系のハードウエア設計への自由度を生かしていると言える。今後、同じ考え方で、Apple社のiOS搭載機器以外の製品であるMacBookやiMacにも200ppi以上の高精細液晶パネルを搭載する計画が、Apple社にあってもおかしくはない。ただし、ほかのセット・メーカーにおいては、高精細パネル採用の「目的」「用途」を明確にしないと、せっかくのパネルの特徴が生かせないおそれがある。

 このようなイベントに絡みながら、2012年はIT機器市場にとっても、FPD業界にとっても需要が盛り上がる年になるよう期待したい。

 なお、2012年のIT機器別の出荷数量はそれぞれ、パネルの出荷計画やセット・メーカーの出荷計画などをもとに、モニタは1億8000万台、ノート・パソコンは2億1500万台、モニタ一体型パソコンは1800万台、ミニノートPCは2000万台と予測している。またタブレット端末は、iPadが牽引し引き続き堅調で、1億2000万台が出荷される見込みである。

 これらIT機器市場の最新動向については、2012年1月25~26日に開催される「第22回ディスプレイサーチフォーラム」(詳細情報はこちら)にて、最新の分析情報をベースに筆者の見解を述べる予定である。