今、1月30日発行の「日経Automotive Technology 2012年3月号」の編集作業の追い込みにかかっているところです。次号の特集のために韓国Hyundai Motors社のことを調べていて、興味深い記事に出くわしました。2011年12月始めごろの記事なのですが、米消費者団体の「Consumer Watchdog」が米環境保護局(EPA)に対し、Hyundaiの小型車「Elantra」の燃費を計測し直すよう要請したというのです。

 Hyundaiが米国で販売している最新型ElantraのEPA燃費は市街地が29MPG(約12.3km/L)、高速道路が40MPG(同17km/L)、平均33MPG(同14km/L)となっています。ところがConsumer Watchdogが消費者からの苦情を受けてテストしたところ、実際の平均燃費は25 MPG(同約10.6km/L)前後にとどまったというのです。通常、EPAの平均燃費に対して、実走行燃費は10%程度しか低下しないのに、Elantraは20%以上下回っていたというのが、再計測を求めた理由です。

 この記事が興味深かったのは、これに類する話を、以前から複数の自動車関係者に聞いていたからです。その一つは、ホンダが北米向けの新型「シビック」を2011年4月に発売したときのことです。後から発売しているにもかかわらず標準仕様車のEPA燃費が市街地/高速/混合でそれぞれ28/39/32MPG(11.9/16.6/13.6km/L)と、Elantraに及ばないのを見て、「日本車が燃費で負けた」という私に、その関係者(ホンダとは無関係の人です)は、ElantraのEPA燃費が公道を走行したときの燃費とかけ離れており、実走行燃費は日本車のほうが良いと指摘しました。

 ただし、今回の出来事をもって「日本車はまだ大丈夫」と安心するわけにはいきません。ホンダの米国向けシビックが、米国の消費者に影響力の強い雑誌「Consumer Report」で「積極的に推奨せず」と評価されたのは記憶に新しいところです。シビックは同誌がテストした12台の小型セダン中、11位の評価にとどまり、ステアリングの剛性不足や乗り心地の悪さ、内装の質感低下などが指摘されたようです。そして、そのときのテストで最高評価を得たのがHyundaiのElantraでした。

 Elantraは、2012年の米国カー・オブ・ザ・イヤーにも選ばれ、販売も好調です。仮に燃費の面ではまだ日本車に分があったとしても、洗練されたデザインや、従来よりも大幅に向上した内装の質感など、学ぶべき点は多いといえるでしょう。日経Automotive Technology 2012年3月号では、Hyundaiに加えて、Renault-日産、Volkswagenという、今勢いのある三つの自動車グループの強さの秘密に迫ります。ぜひご覧ください。