技術経営 技術者が知っておきたい経営と市場の最新情報
 

人間は前向きに出来ている

佐々木次郎
2012/01/16 12:00
印刷用ページ

 「ったく、何であいつは一から十まで後ろ向きなのか、本当にイヤになっちまう! なあ、次郎さんよォ」。

 朝から部長が吠えていますヨ。

 「おいおい、どうしたい。また例の役員がお前さんになにか言ったのかい?」。

 どうやら図星、あの役員さんが部長の足を引っ張っているようですヨ。

 「冗談じゃあねェ、今度の開発、出だしっからケチを付けやがる。『いつものように期待はしているよ、期待を。だがね、上手く行かない時のことも、考えておかなければいけないと思うが、どうだろう』って、ハナからダメを想定しているなんて、一体、何が嬉しくて生きているのか分からねえよ、あの野郎は。開発なんざァ、皆、上手く行くように頑張っているんじゃねェか、それを、ダメが先なんて、どういう料簡だァ?」。

 ははは、部長の言葉使い、段々悪くなりますが、気持ちは分かりますワナ。良かれと思って進める開発。それを最初からケチを付けて、後ろ向きなことを言われてはやってられませんヤネ。

 そもそも、仕事てェものは、実に多くの人と関わり、その方々に教えられたり、助けられて成り立っているものじゃありませんか。特に、開発なんざァ、皆の協力体制が一枚岩になっていないと、上手くは行きません。何より、開発した商品が売れるかどうか、皆、気持ちの中に不安を持っているもんですヨ。ですから、皆の気持ちが同じ方向、つまり前に向いている時、少々の困難があろうとも、それを乗り越える事が出来るし、結果、上手く行くものなんですヨ。

 しかし逆に、後ろ向きのシトが居ると、何をするにも、嫌々(いやいや)と、後ろ向きになってしまうものですナ。どうせやるなら、前向きにやった方が楽しくなるのだろうにといつも思うのですが、どういう訳か、いつも後ろ向きなことばかりを言うシト、いるんですナァ。

 しかも、なぜかそのようなシトは嫌々を変えようとせず、本当にいつも不機嫌なのですヨ。悪いことに、こんなシトと一緒に仕事をしていると、周囲のシトも不機嫌になってしまい、つられて一緒に、暗く落ち込んでしまうのですヨ。

 敢えて言わせてもらえば、このような後ろ向きの影響力なんて、何の役にも立ちませんヤネ。いつものことですが、この役員、何で年がら年中嫌々なのでしょう。嫌々てェのは ”否々”と 書くこともあるくらい、シトの言うことを否定し、何かに付けてブレーキとなる、こんな嫌々の人達、何とかならないものでしょうかねェ。

 多分、後ろ向きに考えるシトにも、それなりの理由はあるのでしょう。例えば、新しい事に対する戸惑いもあるのでしょうし、失敗した場合、自分の責任になってしまうのではないか、そんな心配かもしれません。でも、上手く行かない事は、何をするにもつきまとう話、初めから何の問題も無い話なんてありませんヤネ。いつも言いますが、ダメだったら、そう感じた時に止めればいいのですヨ。そうすれば傷もそこまで。結果、傷口も小さくて済みますし、むしろ、傷になる前に済むじゃありませんか。何より、止めた、その停止ラインが新しいスタートラインになる、そういう事じゃありませんか。ですから、どうせやるなら前向きにやってみればいいじゃありませんか、ねえ。

 「へえ、またあの役員さんがそんなこと言ってるの? もう、いつものことだけど、大概にして欲しいわよねェ。部長も大変よね、さあ行くぞ!って時に、足を引っ張るようなこと言うなんて、出鼻をくじくって、こういうことかしら。でもね、こんな事が何回もあると、ひょっとして、人間って、最初は前向きに生まれているのに、変に知能が発達した結果、後ろ向きな考え方を持つようになったのではないかと思うの。もともと人間は前向きなのに、後ろ向きの人が現れたのは、人間の生きる環境の中に、社会という複雑な構成要素が加わったからかもしれないわよ」。

 う~ん、いつもながらお局の分析、中々鋭いですヨ。
 
 「だって、そうでしょう。人間の身体のつくりは殆ど全部が前向きでしょ。目は前を見るようについているし、鼻も一番前、口も前に向かって開くし、耳も前からの音を聞くようにできているじゃない。前に向いて歩くのが当たり前だし、ものを投げる時も後ろに投げる人はいないでしょう。サッカーだって、基本は前にパスを出すし、後ろにパスをするのは危険だし、至難の技、ごく一部の一流選手しか上手く出来ないじゃない。要するに、挙げればキリが無いくらい、人間の身体はもともと前向きなのよ。だから、人間はその身体と同じように、前向きに生きるようにできているのよ。身体は前向きなのに、気持ちが後ろ向きなんて、自然じゃないわ。人間は、生まれた時から、身体もそして心も、前向きに出来ているのよ!」。

 いやあ、お局、素晴らしい話ですヨ。

 そんなこんなで赤提灯。今夜は前向きに行きますヨ。えっ、ここに行くにはいつだって前向きだって? ははは、ごもっとも、“超”が付くくらい、前向きですワナ。

 「そうか、前向きかァ、そう言えば、おしっこだって前に向かってするようになっていますよね、先輩」。

 あ~あ、ハナからアスパラがトボケた事を言っちまいますヨ。

 「ホント、あんたはバカよねェ、そんなレベルだから、いつもウダツが上がらないのよォ! もっと、上品なシャレを言いなさいよ!」。

 そうそう、アスパラにはもっと勉強してもらわないといけませんよネ。
 
 「いやあ、お局のご高説、今日は勉強になったぜェ。確かに、人間てェのは、前向きに出来ているよナァ。魚や鳥、昆虫や小さな生き物は、周囲をキョロキョロ見回さないと、敵に襲われたりするので、身体のつくりがそうなっているんだな。人間は、生物の頂点に立ったが故に、前だけを向くことが出来るようになったのかもしれねェ。深いぜェ、この意味は」。

 部長も感じ入った様子ですヨ。

 「前向きですよ、特に日本人は。だって、そうじゃありませんか。戦争に負けてボロボロだった国を復興し、更には、この間の大震災。被災地では略奪も起きず、被災者が整然と秩序を保つ姿を、世界中の人が絶賛していました。悲しみの中で、よくもまあ、あれだけのことが出来ると、皆が不思議に思ったのではないでしょうか。でも、今日の先輩のお話を聞くと、そもそも、人間というのは前向きで、後ろを振り向くようには出来ていないのかもしれません。そして、特に日本人は前向きなのではないでしょうか」。

 欧陽春くん、そう言ってくれましたが、アタシ達、肝に銘じて、ズタズタになったこの国を復興しなければいけませんヤネ。

 先程、凹んだアスパラが、名誉挽回のつもりでしょう、今夜の勘定、任せて欲しいと言い出しましたヨ。お局、そこで一言。

 「へえ、アスパラ、感心じゃない。今夜は空気が読めているのね。ある意味で、すごく前向きよ。でも、大丈夫? ムリしてお勘定を払ってもらうのもいいけれど、それで首が回らなくなって、前しか向けないなんてシャレにならないわよ!」。

 さあさあ、今夜はこれでお開きです。お忘れ物など無いように、また明日!

【技術者塾】
実践で学ぶ!システム設計力強化トレーニング(9/2・3開催)

~複雑化する製品の設計情報を見える化し、品質向上と開発効率化を実現~


システム・サブシステムにおいて、要求⇒機能⇒実現手段の順に段階的に設計案を具体化しながら、各段階において異分野の技術が相互に与える影響や背反事項のすり合わせを行うことが重要です。また、元々日本企業が得意なすり合わせをより効率的・効果的に行うために、設計情報を見える化し共通言語とすることが必要です。これらにより、システム目標の未達や見落としを防ぎ、品質向上と開発効率化の実現を目指します。詳細は、こちら
日時:2015年9月2日(水)・3日(木)
いずれも10:00~18:00
会場:京王品川ビル セミナールーム(東京・品川)
主催:日経テクノロジーオンライン
コメントする
コメントに関する諸注意(必ずお読みください)
※コメントの掲載は編集部がマニュアルで行っておりますので、即時には反映されません。

マイページ

マイページのご利用には日経テクノロジーオンラインの会員登録が必要です。

マイページでは記事のクリッピング(ブックマーク)、登録したキーワードを含む新着記事の表示(Myキーワード)、登録した連載の新着記事表示(連載ウォッチ)が利用できます。

協力メディア&
関連サイト

  • 日経エレクトロニクス
  • 日経ものづくり
  • 日経Automotive
  • 日経デジタルヘルス
  • メガソーラービジネス
  • 明日をつむぐテクノロジー
  • 新・公民連携最前線
  • 技術者塾

Follow Us

  • Facebook
  • Twitter
  • RSS

お薦めトピック

日経テクノロジーオンラインSpecial

記事ランキング