もうひとつ重要だと思うのは、できるだけ好きなこと、楽しめることを仕事にしてもらいたい。インターネットやスマートフォンなどのモバイル端末の発達により、仕事は24時間、いつでも、どこでも、できるようになりました。

 しかも、仕事は日本だけで閉じておらず、日本時間の深夜や早朝、休日であっても、海外の顧客や支社、パートナーなどとやり取りをする必要があります。

 もはや、9時から5時の会社に出勤している間だけ仕事をしていればよい、という時代ではなくなりました。いつでも、どこでも仕事をしていないと生き残れない時代になってきたとも言えます。

 こうしたIT技術の発達やグローバル化による競争激化により、仕事をしている時間は飛躍的に長くなりました。ツイッターを見ていると、活躍している人ほど、長時間働いている。寝ている時間以外はずっと仕事をしている人も珍しくありません。

 どんな仕事でも嫌なこと、つらいことがほとんどでしょう。どうせつらい仕事を長時間しなければいけないのであれば、できるだけ好きと思えること、楽しいと思えることを仕事にした方が良いのではないでしょうか。

 逆に「会社が安定しているから、儲かりそうだから」と損得勘定で仕事を選ぶとどうなるか。得に見える仕事も、数年経てば衰退産業かもしれません。もし不幸にも、撤退戦になってしまった時に、仕事内容がある程度は楽しいと思えなかったら、本当につらいのではないでしょうか。

 さて、冒頭のランキングで理系の人気ナンバーワンの東芝。私は東芝でフラッシュ・メモリを開発し、今でもSSDの研究を一緒にやっています。東芝は私のように、生意気で、好き勝手なことをやる人間に対してとても寛容で懐の深い会社。私は今でも東芝にとても感謝しています。

 ただ、入社すれば誰もが定年まで安定して勤めあげられるとは、東芝の社長さんも思っていないでしょう。多くの社員が必死でもがきながら、新しい事業に挑戦する。主要な事業が潰れた時には、たまたま急成長する事業があって穴を埋める。

 例えば、かつて世界トップだったDRAM事業が潰れた時に、ちょうど、フラッシュ・メモリ事業が急成長してきました。こうして、事業内容は変化しながらも、結果として、会社が現在まで長く続いているのだと思います。

 東芝だけでなく、日本のどのような会社であっても、時代遅れになった不採算事業の多くは従業員ごと切り売りされます。そうしなければ、会社が潰れてしまうのですから。東芝は10年後、20年後、30年後も存続しているかもしれませんが、それは、今とは全く異なる事業を行う会社かもしれません。従業員も大幅に入れ替わっているかもしれません。

 これは、東芝だけでなく、ソニーもパナソニックも商社でさえも同じでしょう。優良企業の社員であっても、絶対の安定など保証されていないのです。

 波乱の時代の仕事選び。安定した会社を探すのではなく、自分を鍛えられる変化に富んだ環境と、苦しい中でも楽しいと思える仕事を探して欲しいと思います。