2011年の世界フラットパネル・ディスプレイ(FPD)市場、およびその2012年の注目点を、「応用機器市場」「有機EL」「中国」「テレビ」「テレビ用パネル」の五つの切り口、合計12のテーマによって、以下のようにまとめることができる。

応用機器市場――モバイルが牽引役に

(1)欧州金融不安をきっかけに、世界のテレビ市場、パソコン市場が低迷した。欧州金融不安はいつ解決するのか、先行きは依然として不透明である。
(2)スマートフォンやタブレット端末などの新しいモバイル応用機器が台頭し、脚光を浴びた。
(3)スマートフォンやタブレット端末の需要の台頭が、低温多結晶Si TFT駆動の有機ELパネルやIPS液晶パネル、およびタッチ・パネルなどのデバイスを成長軌道に乗せた。
(4)世界テレビ市場では、ブラウン管(CRT)テレビの置き換えがほぼ終わり(2011年の世界テレビ市場におけるCRTのシェアは10%)、液晶テレビ市場は成熟期に移行した。

有機EL――タブレット用にも量産開始

(5)韓国Samsung Mobile Display(SMD)社の第5.5世代の有機ELパネル量産ラインが立ち上がり、スマートフォン向けを中心にアクティブ・マトリクス駆動有機ELパネルの採用が進んだ。第4四半期には、タブレット端末向けに5.3型や7.7型の有機ELパネルの量産を開始した。

中国――8.5世代ラインの行方に関心

(6)中国現地のTFT液晶パネル・メーカーであるBOE Technology Group社、Nanjing CEC-PANDA LCD Technology社、TCLグループのShenzhen China Star Optoelectronics Technology社の第6世代量産ラインや第8.5世代量産ラインなどが立ち上がった。特に、第8.5世代ラインは2012年に順調に立ち上がっていくのかどうか、注目を集めている。

テレビ――価格のリセットを提案

(7)既に低価格化していた薄型テレビのセット価格とパネル価格が、供給過剰によってさらに下落を続けた。2012年以降は、減速するも下がり続けるのか、その必要はあるのか、が論点になっている。我々は、ぜひとも安くなりすぎた価格の“リセット“を提案したい。
(8)薄型テレビ市場は依然としてグローバルな競争下にある上に、需要低迷も相まって、TFT液晶パネル・メーカーとテレビ・ブランド会社のいずれも“双子の赤字”に陥った。円高下にある日本のテレビ・ブランド会社のいくつかは、黒字化へ向けてテレビ事業の構造改革を開始した。
(9)3次元(3D)テレビは消費者から付加価値を認められず、セットやパネルの価格プレミアムは急落した。

テレビ用パネル――底打ち、徐々に回復へ

(10)大型TFT液晶パネル出荷の対前年比成長率は、セット(テレビやパソコンなど)の成長率を下回った。セット・メーカーは、パネルやセットの過剰在庫を抱え、在庫調整をしたためである。2011年末の時点で、テレビ・ブランド会社におけるセットおよびパネルの在庫は、正常化あるいは一部でタイト化してきたもようだ。
(11)大型TFT液晶パネルは2011年初めから年末まで1年を通して供給過剰となった。パネル・メーカー全体の生産ライン稼働率は第1四半期の80%台前半から第3四半期には70%まで低下した。その後、稼働率は底打ちし、第4四半期には回復するものの75%にとどまる。我々の需要予測に基づくと、2012年後半には85%までの稼働率回復が見込まれる。
(12)バックライトに使うLEDチップも、年間を通して大幅な供給過剰に陥った。参入メーカー過多による継続的な供給増加、TFT液晶パネル1枚当たりのチップ使用個数の低減、TFT液晶パネル需要の低迷の影響を受けた。

 なお、世界のFPD市場の最新動向および今後の見通しについては、1月25~26日に開催される「第22回ディスプレイサーチフォーラム」(詳細情報はこちら)にて、最新の分析情報をベースに筆者の見解を述べる予定である。