唐突だが、中国語ではリンゴのことを「蘋果」という。iPhoneやiPadでおなじみの米Apple社のことも、中国のメディアやネットサイトでは蘋果と表記しているところが少なくないし、そもそもApple社自身が、「蘋果中国-Apple」と称している。一方、iPhone、iPadの生産を請け負う電子機器受託生産(EMS)世界最大手の台湾Foxconn(フォックスコン=鴻海)社は、中国では「富士康」という中国語名で展開している。

 筆者は仕事柄、ほぼ毎日のように中国や台湾の検索サイトで「蘋果、富士康」とキーワードを入力して検索をする。すると通常はAppleやフォックスコン関連のページが検索結果の上位にずらりと並ぶのだが、最近その中に「良いリンゴの選び方」という記事が紛れ込んでいるのを見つけた。

 1月23日の春節(旧正月)を来週に控え、上海では現在、新しい年を迎える準備に人々が奔走している。近年では中国でもコンビニをはじめ春節も休まず営業する店が増えたが、それでも伝統的な風習で春節のご馳走用に食料品などを買いだめする「年貨」という習慣が今でも残る。テレビや新聞雑誌、ネットでは例年この時期、「良い年貨の選び方」という特集を頻繁に組む。今回、検索に引っかかったのはこうしたサイトの一つで、そこでは1980年代に中国が日本から持ち込み、近年では最もポピュラーなリンゴの品種となった「紅富士」の選び方を紹介していたのだった。

 前置きが長くなったが、EMS/ODM業界では2012年の年明け早々、リンゴと紅富士ならぬAppleとフォックスコンに関連した大きな計画が報じられた。

 当社のウェブサイト閲覧には会員登録が必要2週間無料で読める試用会員も用意)では「フォックスコン、河南・山西省の3市をiPhone生産のゴールデントライアングルに」として伝えたのだが、フォックスコンが中国内陸部の山西省晋城市、さらに河南省の省都・鄭州市と洛陽市を、AppleのiPhoneの生産を担う中核基地に育成することを計画。この3市をiPhone生産の「ゴールデントライアングル」と位置付け、生産能力の増強を進めて行く方針を固めたというもの。

 フォックスコンは2010年以降、人件費が高騰してコストの高くなった深センなど中国華南の沿海地区から中国内陸へと生産拠点のシフトを進めている。山西省の日刊紙『太行日報』(1月4日付)によると、iPhone生産のゴールデントライアングルを構築する「金匠中原計画」も同社の内陸シフトの一環だという。

 具体的には河南省の鄭州市に世界最大のiPhone組み立て基地を、洛陽市にiPhone用のガラスタッチパネル基地、山西省晋城市にiPhone用精密キーパーツと機構部品の生産基地をそれぞれ建設するという。

 このうち、山西省晋城のキーパーツ生産については、太行日報が詳しく報じている。それによると、フォックスコンと山西省晋城市政府は2011年9月、総額1000億元(1元=12.3円)を投じて同市に世界的な精密製造の基地を構築する計画について合意。精密機構部品、レンズモジュール、光通信部品、セラミック機構部品、精密切削工具、精密金型、アルミ合金、産業用ロボットの8つの分野で世界最大の生産基地になることを目指すという。