2012年の正念場の決戦に臨むにあたって、日本を含む世界中のエレクトロニクスメーカーに残された時間はそう長くないのかもしれません。赤字を垂れ流すようになってから、企業間の提携を模索しても手遅れの場合が多いのです。赤字になり即撤退となる前に、戦略的に生き残りを図る。まさに世界中の企業経営者の腕の見せどころです。

 エンジニアとしては、企業間で連携や統合をする場合には、小異を捨てて大同団結することが必要でしょう。同じ日本企業同士の統合であっても、各社が独自の開発の文化を持っていたり、採用している技術方式が異なることもあります。

 複数の会社が統合しても、バラバラに技術を開発していてはコストは下がりません。既存技術を採用したのは、歴史的な経緯や各会社固有の理由があるのかもしれません。でも、そういった統合の障壁を、少々のトラブルには目をつぶって、勇気を持って乗り越える必要があります。

 2000年代後半には、東芝、ルネサス テクノロジ、NECエレクトロニクス、富士通などの、日本のロジックLSIメーカーを統合する試みがありました。いわゆる、日の丸ファウンドリ構想だったのですが、何度も検討されたものの、結局は頓挫してしまいました。

 そして、日本では各社バラバラにロジックLSIを開発した結果、製造においてはTSMCといった海外の巨大メーカーに遅れを取り、今では、日本には最先端のロジック工場は無くなってしまいました。

 ロジックLSIの製造では残念な結果になりましたが、最初に述べた、日本が強みを持つ産業はまだ勝機があるでしょう。世界中のどのエレクトロニクス企業も厳しい環境の中、残存者利益を得るための、戦いに挑む。

 戦いは企業だけが行うわけではありません。官庁や大学にも重要な役割があります。官庁は、国策としての企業への支援も必要でしょう。また、企業連携では官庁のリーダーシップも時には必要です。技術のシンクタンクとしての大学の産業への貢献も強く求められます。

 2012年は新産業が生まれる時のような華々しさはあまり無いかもしれませんが、エレクトロニクス産業にとっての勝負の年。企業だけでなく、大学や官庁も含めたエレクトロニクスにかかわる衆知を集め、是非頑張っていきましょう。