明けましておめでとうございます。今年は液晶パネル、テレビ、太陽電池、半導体メモリ、スマートフォン、デジタルカメラ、パソコンなど、エレクトロニクスの様々な分野で世界的に激しい競争が行われ、事業の淘汰が進みそうです。いわば、生き残りを賭けた重要な戦いの年。

 これらの製品は既に激しい価格の低下に見舞われ、事業として成立するかどうかギリギリのところに追い込まれています。収益が赤字になっているケースも多いですし、黒字の場合も極めて低い利益率。もはや付加価値をつけることが難しく、事業を撤退する方が合理的な経営判断に思えます。これは日本企業だけでなく、世界の多くの企業でも同様です。

 こうした事業から撤退し、今後成長が見込まれる医療機器やスマートメーターといった電力機器などに経営資源を集中した方が良いとも言われます。しかし、新しい産業は、将来性の期待はあっても、市場はすぐには大きくなりません。

 「医療」「バイオ」「スマートシティ」といった新事業が立ち上がる時の研究開発は華々しい。その一方、既に大きく成長した産業の体力勝負の戦いは地味です。しかし、長い年月を掛けて積み上げてきた大きな産業が、生き残りを掛けて世界の市場で戦うことは、企業だけでなく、日本の国力という観点からも重要です。

 もちろん、収益が上がらない事業が、漫然と赤字を垂れ流し続けるとしたら問題です。ただ、利益率が低いからといって、事業を撤退することが必ずしも良いわけではありません。どのような産業でも、ある程度成熟し、規模が大きくなると、低収益になるのは必然です。そこで事業を辞めてしまうと、会社や国を支える事業にはなり得ません。

 産業が成熟していくと、低い利益率に嫌気がさして、ライバル企業が次々に撤退します。そして、厳しい生き残り競争の末、世界で最後の1-2社にまで生き残ることができればしめたもの。

 市場で寡占状態になり、市場をコントロールし、長期間にわたって安定した利益を得ることができます。また、低い利益率が、新規の参入を防ぐ高い障壁になります。いわば、残りものには福があるのです。

 例えば、フラッシュ・メモリ事業では、台湾や欧州の半導体メーカーが何度も新規参入を検討し、実際に、様々な企業で試作品の開発が行われました。しかし、フラッシュ・メモリ事業に参入するためには、工場の建設に数千億円もの資金が必要となります。高い参入コストの割に、得られる利益率が低いため、なかなか新規の参入はありません。

 新規参入に必要なコストが比較的低い、携帯端末・テレビ・パソコンなどの組み立て事業の拠点は、台湾、中国、ベトナム、インド・・・と人件費が安い地域を転々と移転していくのかもしれません。