2012年が幕を明けました。

 2011年は読者の皆様にとって、“波乱”の一言では済ませられない年だったと思います。リーマン・ショック以降の長引く不況からエレクトロニクス産業がようやく脱しつつあったときに起こった東日本大震災。数多くの工場が被災するだけでなく、震災に端を発する原子力発電所の事故と電力不足によって、エレクトロニクス産業は大きなダメージを受けました。そして、復興に向けてエレクトロニクス産業が歩み始めたときに、今度はタイで大洪水が起き、タイに進出する製造業が大きな影響を被る。さらに欧州で連鎖的に起きた金融不安による世界的な景気の冷え込みが懸念されています。“超”が付くほど円高な為替事情から、日本の輸出産業の不振や製造業の海外移転による産業の空洞化など、次から次へと問題が起こった2011年でした。

 大きな問題が次々に起こったことで、これまでの考えを見直さざるを得なくなったのも、2011年だったと思います。原子力発電を基軸に据えていた日本において、加速しつつある再生可能エネルギーの導入。自然災害など不測の事態に十分に対応できる事業継続計画、いわゆるBCP(business continuity plan)の再考。工場を海外移転させる一方で、日本の国内産業の位置付けはどうなるのか(開発拠点として、日本のエレクトロニクス産業は存在し得るのか)。不況下でモノが売れにくくなったときに、どのように利益を稼ぐのか。2012年は、こうした数々の課題の解決に向けて動きだす1年になるのは明らかです。

 見方を変えれば、従来は実行できなかった取り組みに踏み出せるチャンスかもしれません。日経エレクトロニクスでは今年、こうした課題解決に取り組み、そして事業の飛躍へと歩み出す読者の皆様に向けた記事を数多く企画しています。

 もちろん、進化が続くスマートフォンやタブレット端末、それらを軸とするサービス、そして電気自動車やハイブリッド車といった電動車両など、伸び盛りの技術や市場の話題について日経エレクトロニクスならではの視点で突っ込んでいきます。

 2011年、創刊40周年を迎えた日経エレクトロニクス。満41歳となる2012年は、日経エレクトロニクスが男性とすれば厄年になります。厄年といえば、体の変調が起こるとよく言われますが、その原因は社会的な責任が重くなることにあると聞きます。社会的な責任を今まで以上に負うとあえて意識し、日経エレクトロニクスが一つでも多くの有用な情報を発信できるようにしていく所存です。日経エレクトロニクスを、本年もどうぞよろしくお願いいたします。

 なお、申し遅れましたが、本年1月1日付で日経エレクトロニクス編集長は大久保 聡(筆者)に代わりました。上述の責任意識を強く持ち、読者の皆様と共にエレクトロニクス産業の発展に努めて参ります。