Aさん 「皆さん、今日は忙しい中、集まってくれてありがとう。プロジェクトもいよいよ佳境に入っていて、大変な時期になっていると思います。なかなか落ち着いてゆっくり休めませんが、体調は大丈夫ですか」
Bさん 「今が頑張り時ですからね。それに僕よりもCさんがすごく大変なので心配です」
Cさん 「いえいえ、Bさんもいつも遅くまで残って頑張ってるじゃありませんか。私もそれに応えない訳にはいきませんよ」
Dさん 「皆さん、本当にお疲れ様です。この頑張りがもう少しで実を結びます。営業としても皆さんの負荷を少しでも軽減できるようやっていきたいと思っています」
Aさん 「そうですね。これまで以上に皆で力を合わせる時期です。今日は、現在起こっているテストの問題について解決策を考えるために集まってもらいました。このままでは、お客様と約束した納期に間に合わせることが難しく、なんとか挽回したいと思っています。今、何が問題になっていて、困っていることがあればぜひ教えてください」
Bさん 「確かにバグがなかなか収束していませんね。一方で、追加仕様の対応も発生しています。Cさんはどう思われますか」
Cさん 「そうですね。当初より膨らんでいる追加仕様もあり、一部の仕様はいまだに曖昧なんですよ。追加仕様に集中できればいいのですが、バグの対応もありまして」
Dさん 「どの部分が曖昧なんですか。私で対応できそうだったら、お客様に改めて聞いてきますよ」
Bさん 「そうですね。いったんCさんにはバグ対応に集中してもらいましょう。追加仕様については僕とDさんで明確化しますよ」
Cさん 「それはとても助かります。では、この部分なんですけど…」

新しい何かを生み出し加える

 さて、何が変わったでしょうか。

 そうです。最初に、相手の状況を思いやるコミュニケーションから始まっています。これをキッカケに話を進めることで会話の印象が全く変わりますよね。これが、前回のコラムで紹介した「関係の質」で始まるコミュニケーションの例です。「結果の質」を問わないことで内容も前向きになっていて、読んでいる私たちの気持ちもよくなります。

 繰り返しになりますが、ダイアローグは答えを出すということを出発点にしません。まず、互いを尊重し、分かり合うというスタート地点から会話を始めます。すると、どうなるか。可能性が広がるんです。相手の意見を素直に受け入れると、今までの自分になかった発想が生まれるわけです。

 これは、前回のコラムで塚本が書いていた「化学変化」です。何か一つの答えを導き出すことが目的の「討議」では、欠けているピースを埋めることしかできませんが、「対話」は欠けているピースを埋め、新しい何かを生み出し加えることを可能にします。

 でも、いきなり「今から、対話しましょう」と言われても、そう簡単にはいかないですよね。歯が浮くような言葉は、恥かしいですし。では、どうすればいいか。

 結局、机上の空論?

 実は、そうでもないんです。私のような恥ずかしがり屋でも、ある手法を使えば、対話を体験し、相手の発想に立つトレーニングができるんです。しかも、とても簡単な手法が。それが「ワールド・カフェ」と呼ばれる対話手法です。