では、どうすればいいか。日本だけではなく、世界的にも同じ悩みを抱えた人々は多いようで、解決法を研究している人がいます。有名なのは、米Massachusetts Institute of Technology(MIT)の教授を務めるDaniel Kimさん。「組織の成功循環モデル」という考え方を提唱しています。

MITのDaniel Kim教授が提唱する「組織の成功循環モデル」
[画像のクリックで拡大表示]

 このモデルでは、結果の質ではなく、まず「関係の質」を高めることからコミュニケーションを始めるように説いています。関係の質を高めると、相手の思考の質が高まる。そうなれば、行動の質が良い方向に変化し、結果として「結果の質が高まる」というわけです。

 関係の質を高めるというのは、相手を尊重して、信頼し合うことからコミュニケーションを始めるということです。互いに日頃から話し合える雰囲気をつくって、相手のことを良く知る。そうすると、相手の置かれている状況が見えてきて、相手のためになることを考える。それが、組織(チーム)としての「思考の質」を向上させ、相互にサポートするように行動の質が高くなる。

 相互にフォローし合えば、全体の作業の効率化にもつながり、余った時間で新しいことにチャレンジできる。その結果、利益の改善や売上の向上、新しいアイデアの発見という「結果の質」の高まりにつながっていくわけです。

有史以来、人間関係の重要性は普遍

 ……。

 そうですよね。「こんなにうまくコトが進むわけないだろう」と思っている方が多いでしょう。私もそう思います。ただ、学ぶべき点が多いことも確かです。特にコミュニケーションのスタート地点に「関係の質」を持ってくるというのは、慧眼だと思います。

 だって、どんな仕事でも人間同士の関係が大切です。これは有史以来、普遍でしょう。でも、職場では、ついつい「課題追求型の議論」になってしまいます。そこで、「関係の質」を高めるために登場するのが「ダイアローグ」です。

 では、前述したシステム開発現場の会話に「ダイアローグ」の要素を入れると、内容はどう変化するでしょうか。今回は、この内容の変化を宿題にしたいと思います。皆さん、ぜひ考えてみてください。次回は、ダイアローグの手法も含めて、関係の質を高める対話について、考察してみたいと思います。

 あ、「おい、宿題やったのか!」とは言いませんので、ご心配なく。

(この項、次回に続く)