この話し合いはもともと、顧客への納期を守るための作戦会議だったのですが、いつの間にか責任の擦り付け合いになってしまいました。

 その結果、プログラマのCさんは自分の作業範囲を制限して、実りのなさそうな話し合いから抜け出そうと考え始めています。一緒になって打開策を考えるどころか、「言われたことだけをやろう」というモード、つまり部分最適な行動をとりつつあるわけです。

 Cさんは、納期に間に合わなかった原因は自分にあると責められているようで、きっと、すごく不快な思いをしていますよね。そういう状態で仕事をすると、モチベーションは下がり、作業の品質に大きく影響することは間違いありません。モチベーションが下がれば、注意力が散漫になり、余計にミスが増える。その結果、作業スピードも遅くなるという悪循環に陥りがちです。

 本来は納期を守るために始めた話し合いが、結果として、プログラマの作業品質を下げることになってしまいました。打開策を見つけるどころか、プロジェクト進捗をさらに悪い方向に導く結果ですね。

「結果の質」から「関係の質」へ

 なぜ、こうした負のスパイラルに陥ってしまったのか。それは「納期に間に合わない=売上の低下」というプロジェクトの「結果の質」を問うことから、コミュニケーションが始まったことに起因しています。でも、日常的に会社で開かれている会議は、基本的にすべて「結果の質」を追求するためのものです。

 「売り上げを上げるにはどうすればいいのか」「納期を間に合わせるにはどうすればいいのか」「このバグはいつまでに改善できるのか」――。

 会議というものは話し合わなければならない、つまり何らかの問題があるから開催されるわけで、こうした議論がなされるのは当然です。会社は利益という「結果を求められる場所」ですから。問題を特定して、原因を追及して、解決策を検討して、次の対策を実行に移すというプロセスは必要なことなんですが、実はこれが負のスパイラルを引き起こしているのです。

 「結果の質」からコミュニケーションを始めると、「自分は悪くない」という主張が始まりがちです。そうすると他人を責めるような口調になり、その人との関係が悪化する。さらには、責められた人の行動に影響を与えるわけです。よく知らない他の部署が責任逃れの発言をしたり、普段会話もしない上司から責任を追及されたりしたら、やる気を失くすどころか、怒り狂ってしまいますよね。それがお仕事の質に反映される。

 だって、当然ですよ。仕事は人の営みですから。一人ひとりのやる気次第で、その集合体の成果は大きく左右されます。だとしたら、悪循環を引き起こすコミュニケーションのミスは大問題です。