先日、私は両親に孫の写真が入ったデジタル・フォトフレームをプレゼントしました。しかし、ほとんどのデジタル・フォトフレームは、機能が多すぎて、かえって高齢の両親には使いこなすことが難しそうでした。どうして、高齢者にも使いやすい、デジタル・フォトフレームがないのか、不思議に感じました。

 また、私ども夫婦は共働きしているので、小学生の子供に携帯電話を持たせています。子供向け携帯電話というと、機能が極端に絞ったものしかありません。一方、通常の携帯は、小学生の子供には機能が多すぎる。

 今後は日本も共働きが増えてくるでしょうし、海外では日本よりも共働きは一般的です。このような子供向けの携帯電話というのは、今後は成長が見込まれる市場ではないでしょうか。

 ここに挙げたものはユーザーの立場に立った、製品のほんの一例にすぎないでしょう。ユーザーの使い方を考えた商品企画やデバイスの開発については、Jobsが大きく取り上げられています。このクリスマスシーズンのツイッターを見ていると、おじいちゃん、おばあちゃんにiPadを贈って使い方を教えてあげた、というツイートが多くみられました。

 こうした商品企画はJobsだけでなく、私たち日本のエンジニアにもできると思います。私たち日本のエンジニアは、今まで、高速や大容量といったわかりやすい製品を開発することに集中してきて、ユーザーエクスペリエンスをそんなに重視してこなかっただけ。

 Jobsも高性能のコンピューターをNeXTという会社で開発して失敗したり、数多くの失敗の末に、徹底的にユーザーエクスペリエンスを考えるようになったのです。

 幸い、前回のコラム「Appleが半導体ベンチャーの買収を狙うわけ」にも書いたように、日本にはハードウエアや素材の強み、世界で勝てる武器があります。この強みを持ったうえで、徹底的にユーザーの立場に立って、商品を企画する。この商品企画に必要なスキルがMOTなのです。

 ユーザーの立場に立って商品を企画するというのは、実際のところは、たいへん難しい。私にとっても新しいチャレンジになりますが、来年のコラムでは、こうしたユーザーの立場に立った製品の企画や技術開発について、私もみなさんと一緒に考えていきたいと思います。

 この一年、このコラムを読んで下さり、本当にありがとうございました。来年がみなさま、そして日本にとって良い年になりますように。どうぞ良いお年をお迎えください!