BRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)に続き、経済が急成長すると見込まれているのがベトナムとインドネシアである。この二つの新興国でも、スマートシティの構築プロジェクトが立ち上がりつつある。日本政府も積極的に支援しており、日本企業にとっては、都市づくりビジネスへの参入機会が拡大している格好だ。

都市化率の急激な高まりを予測

 ベトナムでは、首都ハノイや商都ホーチミンでプロジェクトが始まった。ベトナムの人口は約8600万人。経済開放政策の進展とともに国民生活が徐々に豊かになり、1990~2010年までの20年間で人口が約2000万人増えた。都市数も2000年の645から、2010年には755まで拡大し、毎年80万人が新たに都市に暮らすようになっている。

 そのため、都市化率(都市部に住む人口の割合)も上昇する一方だ。1990年に19.5%だった都市化率は2010年には30.2%になっていて、2030年には45%に達する見込みである。

 この急速な変化に、都市インフラの整備は全く追いついていない。朝晩のラッシュ時に無数の二輪車が道路を埋め尽くす様子は、今や見慣れた光景になっている。都市における生活ゴミの処理も社会問題化している。

 ベトナムは2020年に向けて、コメや石油といった1次産品の輸出国から工業製品の輸出国へと変身することをもくろむ。外国企業を誘致するための工業団地や、輸出入に欠かせない空港・港湾の整備も急務になっている。

 元建設副大臣でベトナム都市計画開発協会の代表を務めるTran Ngoc Chinh氏は、「工業化を進めると同時に、スマートシティを建設することでスマートシティ関連産業も育成する。こうした経済の発展の中で、農村から都市への人口の移動がさらに加速すると予想している」と言う。

交通手段の整備が最重要

 ベトナムにおけるスマートシティ構築プロジェクトの代表例が、ハノイから西に約30km離れたホアラックだ(図1)。ここではIT(情報技術)産業の集積を目指す工業団地(ハイテクパーク)と一緒に、新しい都市の建設を進めている。ハノイとは将来、高速鉄道と高速道路によって結ぶ予定で、面積2.3平方キロで人口が5万人を超す都市になる。JICA(国際協力機構)が工業団地の開発計画を支援した。

図1●ベトナム・ホアラックで計画されているハイテックシティの完成予想図
図1●ベトナム・ホアラックで計画されているハイテックシティの完成予想図
(出所:Tran Ngoc Chinh氏講演資料)