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日本のムラ社会を打破せよ

被災地復興に懸ける“負けず嫌い”、宮田秀明氏(下)

加藤 幹之=Intellectual Ventures 上級副社長兼日本総代表
2012/02/06 07:00
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 前回から紹介している東京大学 教授の宮田秀明氏は、負けず嫌いの人である。とにかく勝ちたい。勝つために徹底的に努力する。世界最高峰のヨットレース「America's Cup」の日本チームのプロジェクトや、さまざまな船舶の開発、経営へのIT活用、東日本の被災地復興のプロジェクトまで、多くの分野でその努力は遺憾なく発揮されている。

 負けず嫌いで、独立独歩する人間は周囲とぶつかることが多い。宮田氏もその例に漏れない。それでも、信念を曲げない強さこそが、同氏の活躍を支えてきた土台だろう。石川島播磨重工業(現IHI)で船舶設計の経験を積み、東大に戻ってからも自らの信念で研究を進めた。

 東大出身だが、助手として戻った先は自分が大学院生の時に所属した研究室ではない。明治時代からの長い伝統がある看板講座の船舶工学第一講座だった。当然、上には教授も、助教授もいるわけだが、「彼らの研究手法は間違っている」と、自らの道を進んだ。

ムラの権益を守ることを優先する日本社会

宮田氏が開発を手掛けた水中翼船
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 宮田氏の名前を船舶分野で広く世界に知らしめたのは、その当時の研究である。「自由表面衝撃波」という波の理論を確立した。当時、船の舳先で生じる波は線形現象だという見方が一般的で、それを基に船は設計されていた。だが、宮田氏はその波が非線形現象で、一般的な設計手法は間違っていると考えた。その直感は当たっていた。まだ珍しかったコンピュータ・シミュレーションを取り入れた研究で新しい設計手法を得た。この手法は、今や世界中の船に取り入れられている。

 だが、成果を発表してしばらくは、学会でかなりいじめられたようだ。当時の研究者が数十年築いてきた研究成果を否定するものだったからである。宮田氏は当時をこう振り返る。

 「誰も現象を知らなかったから、私がたまたま叱られたんですね。日本だけではなく、世界中が現象の理解を誤っていたんです。非線形現象であることを私が発見して、設計法まで昇華した。30歳代は、この設計法を世界中に広めていました」

 宮田氏は、日本の学会がムラ社会だと指摘する。ムラ社会は独特な風土を持っており、調和を乱さないこと、ムラの権益を守ることが優先される。だから、異能が入り込むことを拒む風土がある。「企業も同じです。経団連ムラ、鉄鋼ムラ、電機ムラ、自動車ムラ…。特異な能力を持った人を育てようとしていません」と、宮田氏は話す。

 近年の日本では、個々の技術力は高くても、それを世界的なビジネスに昇華する例が少ない。今をときめく米Apple社は優れた製品づくりだけではなく、ビジネスモデルにも踏み込んだシステム的発想で新たな製品モデルを提案している。日本のムラ社会の中では、Steve Jobs氏のようなビジネス全体のアーキテクチャを考え、システムをデザインする人材が育たないというわけだ。

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