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長く研究を続ければ、いいってもんじゃない

被災地復興に懸ける“負けず嫌い”、宮田秀明氏(上)

加藤 幹之=Intellectual Ventures 上級副社長兼日本総代表
2012/01/16 07:00
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 宮田秀明氏。東京大学の教授で、船舶工学やプロジェクト・マネジメント、経営システム工学などの専門家である。世界最高峰のヨットレース「America's Cup」の日本チーム「ニッポン・チャレンジ」のテクニカルディレクターを務めた人物としても広く知られている。東日本大震災以降は、津波で大打撃を受けた被災地を復興するプロジェクトを自ら指揮し、超多忙な日々を送っている。

宮田秀明氏。東京大学 大学院 教授。
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 東京・本郷にある東大工学部の研究室にお邪魔して話し始めると、輝かしい経歴からは想像できないような、気さくでオープンな雰囲気を持つ宮田氏を発見した。東大教授としての宮田氏の経歴は異色である。1972年に東大大学院の修士課程を修了後、大学には残らず、石川島播磨重工業(現IHI)で船舶の設計技術者として過ごした。

 1977年に東大に戻ってからは研究者の道を歩むが、宮田氏は大学という象牙の塔には引きこもらない人物である。常に社会との接点を頭に入れ、世の中のさまざまなプロジェクトにどんどんと飛び込み、プロジェクト・マネジメントに携わってきた。企業と共同で行う船舶の開発から、ヨットレース、IT(情報技術)を駆使した社会システムの新提案まで常に現場で陣頭指揮を執ってきた。このバイタリティあふれる行動力は、どこで生まれたのか。原点の一つは、石川島播磨での船舶の設計経験にあるようだ。

企業での設計経験で培った現場意識

 石川島播磨での5年間、宮田氏は主に船舶の基本設計に携わった。コンテナ船やタンカーなどで大型船が続々と登場する船舶分野の技術変化が激しかった1970年代に、受注船の設計や、LNG船の開発プロジェクトなど、さまざまな船の設計を経験した。船舶の基本設計は、基本となる船舶の形状を決めて、詳細設計の担当チームに渡して終わりという流れ作業ではない。完成した船の最終的な性能にも責任を負う。設計だけでなく試運転まで携わり、顧客に製品を渡す最後の部分まで自ら見届ける。

 速度について船舶は自動車などよりも経済性を強く求められる。速ければいいというものでもないらしい。あるとき、こんなことがあったという。

 10数隻を受注していた3万トン級の標準船を模型実験してみると、想定した速度が出そうもない。既に建造を始めていた工場で船首部分だけ造るのを止めてもらい(船は後ろから建造するのだという)、慌てて設計を見直した。ところが、実際に完成した船で試運転してみると、今度は予定より速度が速い。馬力が15%余分だったのだという。

 素人なら褒めちぎってしまいそうな成果かもしれないが、プロの世界ではそうもいかない。契約した性能より速度が出すぎたということは、過剰な設計でコストをかけ過ぎたと言われかねない。ただ、この“失敗”結果は後に宮田氏が大学に戻り、波の非線形現象に関する研究で成功を収める契機の一つになる。設計段階での数字と、実際に船ができてからの性能のずれに疑問を持ったのだ。

 設計者は、経済性につながる全体のコストを含めた全体のアーキテクチャを視野に入れて設計を手掛ける必要がある。船舶設計者が「ネーバル・アーキテクト(naval architect)」と呼ばれるゆえんだ。

 宮田氏は「設計部門にいた時代には、営業に近い仕事もしました」と語る。顧客と接し、直接要望を聞く。自ら設計し、性能に責任を持つ。同時に巨大建造物の全体コストを考え、開発プロジェクト全体をマネジメントする。同氏が今でも大きなプロジェクト全体のマネジメントを常に念頭に置くのも、20歳代後半に企業で体験した技術者としての仕事で身に付けたことが大きいのだろう。

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