米Apple社のスマートフォン「iPhone 4S」では、前モデルの「iPhone 4」で指摘された“アンテナ問題”を解決できているのだろうか――。そんな疑問をデータで検証するために、携帯電話会社でアンテナなどの研究をしていた経歴を持つ、拓殖大学 工学部 准教授の前山利幸氏に受信感度を測定してもらいました。

 iPhone 4のアンテナ問題は、筐体の左下側面に触れると受信感度が劣化するというものでした。米消費者団体が発行するConsumer Reports誌が「iPhone 4は推奨できない」としたこともあり、Apple社はケースの無償配布に踏み切らざるを得ませんでした。そのときも前山氏に受信感度を測定いただき、手で持った状態で受信感度が大きく低下したのを確認しています(関連記事)。

 今回も、前回と同様の手法で、前山氏にiPhone 4Sの受信感度を検証してもらいました。日本で購入したiPhone 4Sでは測定用のSIMカードを受け付けない場合があったため、海外からSIMフリーのiPhone 4Sを取り寄せたりしながら、なんとか測定できました。その結果、手で持った状態で受信感度が劣化する度合いは、iPhone 4Sで大きく改善されていることが分かりました。前山氏の解析では、グランドの強化や構造の変更などによって、感度劣化への対策がなされているということでした。

 この他に、iPhone 4Sの分解で新たに見つかった「アンテナ線」は、CDMA2000モードがサポートする「受信ダイバーシチ」機能を実装するために使われているのではないか、という結論に達しました(関連記事)。本体下部をメイン・アンテナ、本体上部をサブ・アンテナとし、それらを電波状態によって使い分けるというものです。アンテナ線は、上部サブ・アンテナをRFのICとつなぐ役割を果たしています。これにより、CDMA2000モードのiPhone 4Sでは、手で持った状態の受信感度の劣化を、さらに回避できるようになっているようです

 前山氏による解析の結果は、日経エレクトロニクス2012年1月9日号の寄稿「iPhone 4Sで受信感度は改善したのか」でご覧いただけます。来年まで、もう少しお待ちください。