一昨日まで台湾に出張していたのですが、そこで興味深い話を聞きました。「米Apple社がタッチ・パネルの新技術開発のために、200人以上を投入している」というものです。

 この新技術とは、表示装置である液晶パネルと入力装置であるタッチ・パネルを一体化するインセル技術とのこと。これまで別々の部品だった液晶パネルとタッチ・パネルを一体化することで、全体を薄型・軽量化できるようになります。生産歩留まりの確保が難しく、実用化が遅れている技術ですが、もしこの課題が克服されれば、スマートフォンやタブレット端末のメーカーがこぞって採用するでしょう。薄型・軽量化に加えて、部品点数削減による低コスト化も期待できます。

 タッチ・パネルの技術開発では、もう一つ新しい動きがあります。タッチ・パネルを構成するガラスやフィルムの使用枚数を減らして、薄型・軽量化を進めようとする技術です。具体的には、保護カバー・ガラスにタッチ・センサ(電極)を形成することで、1枚のガラスで保護カバーとタッチ・センサ基板の二つの役割を持たせます。これまではタッチ・センサ基板として、保護カバーとは別に1枚のガラスや2枚のフィルムを用いていたのですが、これらを不要にできます。ガラス基板が1枚で済むことから、「One Glass Solution(OGS)」などと呼ばれています。

 2011年10月に開催された展示会「FPD International 2011」でも、このようなガラス1枚型のタッチ・パネルの展示が目に付きました。例えば、台湾Chimei Innolux社の静電容量式タッチ・パネルです。ガラスを2枚使ったタッチ・パネルと比べて、厚さが最大36%減、重さが最大26%減になる可能性を、同社は示唆していました(Tech-On!関連記事)。また、台湾AU Optronics(AUO)社は27型と10.1型の、ガラス1枚型の静電容量式タッチ・パネルを展示しました。27型はガラス1枚型として世界最大サイズであり、厚さは0.7mm。10.1型はガラスを2枚使ったタッチ・パネルと比べて、重さが33%減になるといいます(ニュース・リリース)。

 インセル型とガラス1枚型のいずれの技術も、メーカーは2012年の本格量産化を目指して開発を急ピッチで進めています。スマートフォンやタブレット端末に影響を与えるタッチ・パネル技術の進化からは目が離せません。最後に宣伝を一つ。タッチ・パネルについて、日経エレクトロニクスでは技術解説セミナーを12月14日に開催します(詳細はこちら)。タッチ・パネル技術の基礎から将来展望までを学びたいという皆様にお勧めいたします。