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iPhoneだけではない引き算の重要性

思い切った技術の取捨選択が「異質の時代」のカギ

竹内 健=東京大学 准教授
2011/12/08 09:00
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 半導体デバイス技術に関する世界最大規模の国際会議であるIEDM(International Electron Devices Meeting)に参加するためにワシントンに滞在しています。会議の冒頭でIntelのMark Bohr氏が「The Evolution of Scaling from the Homogeneous Era to the Heterogeneous Era」と題して基調講演を行いました。

 今まで半導体産業が推し進めてきたのが、Homogeneous Era(同質の時代)。ムーアの法則に則って、シリコン基板上に作られるトランジスタをより小さく加工することで、CPUやDRAM、フラッシュ・メモリ、センサといったコンピュータの中核となる部品を高集積化、高性能化、低電力化してきました。

 しかし、シリコン上に形成されたトランジスタの微細化が物理的な限界を迎える今後は、Heterogeneous Era(異質の時代)に移行する。シリコン以外の化合物半導体といった新しい材料を導入することによって、性能向上や低電力化を目指すことになります。このHeterogeneous Eraでは異なる材料で作られた様々な部品、例えば、CPUやメモリ、センサが3次元に集積されるようになると考えられています。

 様々な異なる部品を3次元に組み合わせて多様な機能を実現する、という半導体の技術の方向性には私も異論がありません。そんな「異質の時代」にカギになるのは、最初は「異なる様々な部品をいかにして組み合わせるか」つまり、「足し算」の技術になるでしょう。日本は様々な部品を組み合わせて機能を増やす「足し算」は比較的得意です。

 日本の携帯電話機の歴史を考えると、「iモード」「写メール」「おサイフケータイ」「モバゲー」といった多種多様な機能やサービスを生み出し、それらをコンパクトに実装した、いわゆる「ガラケー」を発展させてきました。

 ところが、多くの機能を詰め込み過ぎて複雑さが増すと、ある段階からは、かえって使い勝手が悪くなってしまう。日本の携帯電話機では、一部の技術に秀でたユーザー以外の一般的な利用者には、使いこなせなくなってしまう、という状況が出てきました。

 つまり、多機能化は最初は「足し算」であっても、機能が充実してからは、むしろ機能を制限する「引き算」が重要になるのではないでしょうか。

 機能の絞り込み、引き算をうまく行ったのが、iPhoneやiPadを作ったAppleのSteve Jobsです。Appleの製品は日本メーカーが開発したスマートフォンやタブレット端末に比べると、シンプルで美しい。この美しいデザインを可能にしたのは、メモリ・カードのスロットや映像端子を入れない、という機能を限定した「引き算」の決断から。

 iPhoneの素晴らしさは、音楽プレーヤー・携帯電話機・コミュニケーション端末という多様な機能を詰め込みつつも、それぞれの機能のバリエーションを極力そぎ落とすことで、多機能化と使いやすさ、デザインの美しさといった矛盾した要求を両立したことです。

 Steve Jobsは技術者ではなくデザイナーだと言う人もいます。しかし、プログラムを書いたりCPUやメモリといった部品を設計、製造するだけが技術ではありません。技術が多機能化するにつれ、ユーザーの動向や使い勝手、デザインなどを考えた上で、機能を取捨選択することも「技術」ではないでしょうか。

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