トヨタ自動車の燃料電池車「FCV-R」
トヨタ自動車の燃料電池車「FCV-R」
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 「第42回 東京モーターショー2011」を取材してきました。11月30日と12月1日の報道関係者の招待日と、12月2日の特別招待日を待って、いよいよ一般公開が始まった12月3日。冷たい雨が降りしきる中、開場時間の10時前には1000人を超える来場者が詰めかけて長い列を作りました。

 事務局の発表によれば、12月2日の特別招待日から12月4日までの3日間の入場者数の累計は24万4800人となりました。これは、前回の2009年における同期間の入場者数累計15万500人と比べて約1.5倍と、多くの人が会場に足を運びました。“車離れ”を心配する業界関係者の方々は、ホッと胸をなでおろしているところではないでしょうか。

 今回の東京モーターショーの展示を見て、筆者も実はホッとしているところです。それは、出展を期待していた「燃料電池車(FCV)」と「クルマのワイヤレス給電」に関する話題があったからです。

トヨタ自動車の意思表示


 まずFCVに関しては、前回の「Editor’s Note」で、2011年9月に開催された「フランクフルト・モーターショー」でのFCV開発の様子を紹介しました( Tech-On! 関連記事1)。その中で、「12月の東京モーターショーに期待!」と書きました。

 既にTech-On!でも記事を掲載していますが、今回の東京モーターショーではトヨタ自動車がセダン・タイプのコンセプト・モデル「FCV-R」を世界初披露しました( Tech-On! 関連記事2)。FCV-Rは2015年ごろの市販化を強く意識したモデルで、「トヨタはセダン・タイプを出す、という意思表示の車両」(同社の担当者)です。この他、ドイツDaimler社は、2025年ごろの実用化の意識した未来のFCV「F125!」を日本初披露しています( Tech-On! 関連記事3)。

 FCVが電気自動車(EV)やハイブリッド車(HEV)に対して技術的に優位な点に、ガソリン車の代替にできることが挙げられます。特に、EVでは実現が難しい500kmを超える走行距離を、FCVなら達成することができます(EVでも大量の2次電池を搭載すれば可能ですが、現実的ではありません)。実際、トヨタ自動車のFCV-Rは、JC08モードで700km以上の走行距離を達成しています。

 さらに、ハイブリッド車にも必要なガソリンを使わないことも優位点です。「時期は分かりませんが、将来的にはガソリンは枯渇します。その時代でも便利なモビリティ社会を構築できるようにするためには、FCVが必要なのです」(トヨタ自動車の担当者)。車両価格の低減や水素インフラの構築など課題は多く残されていますが、未来のクルマの有力候補としてFCVがあるのです。

ワイヤレス給電はアピール合戦へ


 もう一つホッとした話題の「クルマのワイヤレス給電」ですが、こちらは日経エレクトロニクスの11月28日号の特集「ワイヤレス給電、制するのは誰か」で、クルマのワイヤレス給電化に関する研究開発が加速していることを紹介しました。自動車メーカーに取材をした中で各社が開発を進めていることは分かったのですが、東京モーターショーの会場ではそれを強く実感することができました。

 ワイヤレス給電システム(やそのモックアップ)を組み込んだ車両の展示が相次いだのです( Tech-On! 関連記事4)。例えば、トヨタ自動車や三菱自動車などは米WiTricity社の「磁界共鳴方式」のワイヤレス給電システムを実装することを想定した車両を、日産自動車は「電磁誘導方式」の同システムの車両を公開しました。

 ワイヤレス給電は、充電ケーブルをなくして駐車場に置くだけで充電を開始してくれたり、走行中に給電してくれたりとユーザーにとってメリットの大きい技術として各社が実用化を目指しています。その中で、デファクト・スタンダードを巡って磁界共鳴方式と電磁誘導方式が競争を繰り広げています。各社が推す方法の違いは展示内容にも反映されておりますので、お時間があればぜひ会場に足を運んでいただければと思います。

 最後におまけとして、会場に行きたくなるような写真を幾つか。

Daimler社が2025年ごろの未来を意識したFCV「F125!」
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いすゞ自動車が出展した国内に現存する実走可能な最古の国産バス「スミダM型バス」
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Volkswagen社が世界初披露した「Passat Alltrack」
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