QCD別ランキング

 次に、QCD別のランキングを見てみる(図3)。2010年度調査の対象となった製品やプロジェクトの品質達成度は、自動車部品業界が2007年度調査に引き続き1位のポジションをキープした。自動車業界も2回連続2位だ。建機・農機業界は前回6位から大躍進の3位となった。コスト達成度になると今度は自動車業界が前回5位から1位にジャンプアップしており、昨今の経済的難局を乗り越えるために相当な努力をしてきたことがうかがえる。もちろん自動車部品業界についても同様で、努力の結果として2位を堅持したと考えられる。前回1位の事務機器業界は4位にランクダウンした。期間達成度は自動車業界が自動車部品業界を抜いてトップに躍り出た。自動車部品の納期が遅れれば自動車自体の発売も遅れかねない関係があるので、ペアで上位になっているのだろう。下位にある工作機械業界や建機・農機業界はそれぞれ前回と同じ順位になっているが、開発期間に影響を与える詳細設計やプロジェクト計画の評点が低いことを考えれば当然の結果といえる。

図3
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技術者力は精密機器業界が1位

図4

 技術者力の業界別ランキングでは精密機器業界がトップになった(図4)。技術者力の調査は2010年度に初めて実施したため前回順位はない。この技術者力というのは、技術者一人一人が「製品開発に臨む姿勢」を問いかけているものであり、スキルや技能を測定しているものではない。従って精密機器業界の技術者達の多くが、自社製品に思い入れを持ち、同僚を気遣いながら、チーム一丸となって開発に取り組んでいるということになる。次いで自動車業界、工作機械業界の順で技術者力が高いという結果になった。

 業界別の業務環境についても確認してみると、技術者力の順位に極めて似ていることがわかった。業務環境は、「チャレンジが支援される業務環境ですか?」「能力を引き出してくれる人がいますか?」「現在の業務を通して自己実現ができますか?」「共に働きたいと思える人がいますか?」「業務成果に対する評価に納得していますか?」という五つの設問を用意して、物理的な環境ではなくいわば精神的な環境について問いかけたものだが、やはり精神的な業務環境が良いほど技術者力にも良い影響を与えるということだろう。