(3)次に視点を意識する

 上の三つの視座から問題解決過程を見ますと、多くの視点が出てきます。問題、解決、過程、提起、関係視座(これも視点です)、責任、統括、問題発見、事態の確認、調査、分析、課題、改善、要求、開発、顧客、親会社、取引会社、計画立案、記録、アイデア、クレーム、管理、問題対処、問題解決、分担、解決案、案の決定、実験、過程の確認、解決の確認、案の実行、コンサルタント、協力、関係機関、評価、支援、報道、批判、調停、行政、相談、研究、記録保存など、実に多くの視点に気付きます。

 さらに、PDCA(Plan Do Check Act)や、TPO(Time Place Occation)や、MD計算(Merit Demerit比較)や手段―目的分析(Means Ends Analysis)などという「視点のセット」も用います。

 また、問題の分野に関しても、解決の方法に関しても、専門的視点が大量に出てきます。技術の問題なら技術に関する視点が、製造の問題なら製造に関する視点を丁寧に取り上げ、それぞれの視点を専門的に検討します。そして、視点力を駆使して、問題解決を多面的に捉え、漏れ・落ちのない解決や見落としがない解決が生まれるように努力します。

(4)そして価値観をチェックする

 問題解決過程で、最も大切なのが「価値観」です。もしあなたが問題提起側に立っていたとしても、問題解決側に立っていたとしても、その過程で何を重視するのですか。何を守ろうとするのですか。何を残したいのですか。何を評価されたいのですか。何にお金や人材や時間をかけるのですか。

 この問いに対する答えは、すべて価値観を基にして出します。もちろん、価値観にはいろいろな視座の価値観があります。会社という組織の価値観も、社長や経営者の価値観も、従業員の価値観もあるでしょう。顧客の価値観も、株主の価値観も、会社を囲む一般社会での価値観もあるでしょう。

 私たちが最も重視するのが、問題解決に関わる個人の人間としての価値観力です。それは信念に照らした問題解決であって、大げさに言えば、ひとりの人間の一生が懸かっている「問題解決過程」もあるはずです。

 「努力を無駄にしないための価値観チェック」「馬鹿を見ないための価値観チェック」「はしごを外されないようにするための価値観チェック」「法に違反しないための価値観チェック」「コンプライアンスに配慮した価値観チェック」「職場で浮かないための価値観チェック」など、いろいろな価値に配慮すべきです。

(5)最上流工程

 一般には、問題解決は「上流工程」から「中流工程」、「下流工程」へ向かって進められますが、私が注目したいのが「上流工程のスタート・ポイント」での思考です。問題解決に関わる人は、まず「視座力・視点力・価値観力」を発揮して、次の問いをチェックしてほしいと思っています。

①その問題や問題設定に疑問はありませんか。
②その問題は本当に解決すべきものですか。
③視座を十分検討していますか。
④視点に漏れ・落ちはないですか。
⑤価値の検討や価値観からの検討は十分ですか。
⑥信念に基づいた問題解決ですか。

 これら少なくとも6項目をチェックする工程を実行してから、再び「上流工程」へと戻りますので、この工程は一種の「Uターン工程」であると言えます。しかし、チェックする前に考えていた上流工程と、チェックした後で考えた上流工程が、しばしば質的に異なる場合が出てきます。それは「問題解決の質が変化している」のです。質の変化の大きなものは、初めに想定した解決の道と異なる別の道が発見されたことになります。

 私たちはこの「質を変化させる工程」を「最上流工程」と呼んだり、「Uターン工程」と呼んだり、「遡行・見直し工程」と呼んだりしていますが、質の変化こそ注目すべきであると考えています。