例えば私が30年働いている広告ビジネスでも、中国には20年ほど前からいわゆる「4A」と言われる欧米系の広告代理店が進出しており(香港地区や台湾地区にはもっと早くから入っていました)、欧米流のサービスモデルとビジネスモデルを中国に定着させています。具体的には、当地の広告会社の典型的な収益モデルでは広告戦略やクリエーティブ制作の対価を月極めの「フィー」でクライアントに請求します。ところが、日本ではテレビや新聞などの広告メディアの時間帯やスペースの売買に伴う取り扱い手数料が広告業の主たるビジネスモデルなのです。かつては欧米の先駆的広告会社も同様のビジネスを行なっていたのですが、中間流通的な業態はやがて成り立たなくなり、業界全体の構造転換を迫られた結果、一気にフィービジネスモデルに移行した訳です。

 日本市場の独自性に守られた日本の広告会社では、善し悪しは別として結果としてグローバルと異なるやり方が残っているのです。中国を日本の延長だと捉えると必ず失敗します。何故なら、そこはアメリカやインドと同じグローバルビジネスが行なわれている市場だからです。

日本の技術は世界に通用する。が、技術を売るための技術が必須

 自虐や自戒の念を込めてガラパゴスと称されることが多い昨今の日本の技術ですが、もちろん日本企業や日本市場向けに開発した技術はそのままでは海外スペックに合わないケースが多いのは確かです。しかし、優れた技術であれば必ず買い手はいます。中国企業は今日本やドイツなどの高い技術力を誇る部品メーカーの買収に乗り出しています。買われるのも一つの選択肢ですが、しかしここは停滞する日本経済を救うべく、日本の技術系企業はアジアをはじめ世界市場を日本の内需として開拓するんだ、というぐらいの気概をもって海外進出してもらいたいものです。

 その際、徒手空拳ではモノは売れません。早い話、中国語のしゃべれない日本人がどうやって中国でお客様を見つけて商談するのでしょうか。通訳を使えばいいじゃないか、と古い発想を持ち出す方々は、流暢な中国語で商談する韓国人やアメリカ人の隣でプレゼンテーションしてみればいいと思います。自ら彼の地の言葉で話すことがどれほど相手の心を捉えることか。商談は商品スペックや取引条件だけの話ではありません。相手の心をつかみ、信頼できるパートナーとして認めてもらうことがもっと重要です。

 というわけで、私が言う「売るための技術」の一番目は言葉・コミュニケーション能力です。日本が世界市場で戦うようになって久しいのですが、日本人の外国語オンチは一向に直りません。私達は外国語の習得に真剣でなかったことを大いに反省し、今すぐ努力を始めなければなりません。

 例えばマレーシアのビジネスマンは子供の頃から英語で話をしていますからネイティブ並に英語を操ります。無論国語であるマレー語は堪能ですし、中国系のマレーシア人であれば出身地である福建の言葉に加えて現代標準中国語(普通話=プートンホア)の計4カ国語をしゃべります。ヨーロッパの人々も同様ですよね。本当に必要に迫られれば、人間はそれ位の学習能力を発揮できるはずなのです。

 コトバ習得の問題はまた別の機会にお話しするとして、ここからは本題の「ブランドの作り方」に集中したいと思います。このコラムでは次回以降、今すぐ実務に役立つブランド戦略論・ブランド管理の方法論を「ブランドで攻める!7つの要諦」として順を追って中国発の旬のネタや事例と共に紹介していきます。