過去10年間、欧州における太陽光発電産業への促進政策および太陽電池の低コスト化が進む中で、中国は太陽電池製造の世界的なリーダーに成長し、その地位は揺るがないものになりつつある。同時に、中国の台頭は世界の太陽光発電産業に衝撃を与えた。生産拠点もどんどん中国へ移っている。中国は改革開放と計画経済のもと目覚ましい発展を見せる一方で、中国の台頭によってすさまじい価格競争も起こっている。今後、中国自身も新たなステージへ移行しなければならない状況にある。太陽電池生産量で世界第2位を誇る台湾も、中国の台頭に圧力を感じ、対応に追われている。本コラムでは、中国の太陽光発電産業の現状と今後の発展戦略を分析すると共に,台湾と日本の今後の対応について提案する。
低コスト化によりアジア・メーカー主導へ
太陽光発電システムは、発電機を使わずに太陽光をそのまま電気エネルギーへ変換できる。ほかの再生可能エネルギーに比べて設置のための制約が少なく、費用も低いので、一般消費者でも設置しやすい。従って、各国・地域政府が普及拡大を目指す分散型発電モデル「民間発電設備」としても適している。しかし、現状では、設備の設置と発電のコストはまだ十分に下がっておらず、爆発的な市場成長には至っていない。
この10年間、太陽電池市場を牽引してきたのは欧州である。2004年からドイツが固定価格買取制度(フィードイン・タリフ)を実施したことにより、欧州で太陽光発電ブームが起こった。ドイツ、スイス、米国の製造装置メーカーはこれをチャンスととらえ、ターンキー装置を量産化して市販し、太陽電池製造への新規参入を支援した。その結果、太陽電池メーカーが雨後の筍のように現れて、太陽光発電産業は急拡大した。
しかし、2008年の経済不況およびスペイン政府が補助を突然停止したことにより、太陽光発電産業の成長はバブル現象的な様相を示した。好況から一転して各国・地域政府が急きょ補助を減らすなどしたため、太陽電池の価格は急速に低下した。その時点まで技術をリードしていた欧州や日本のメーカーは、価格競争力不足のため中国と台湾に追われ、「市場は欧州と日本、生産はアジア」という局面になった。
欧州と日本のメーカーは,景気が良い時は利益を出せるが、不況になると設備稼働率が低下し、価格低下と相まって赤字に転落してしまった。一方、アジアの大手メーカーは、比較的安定な注文があり、10~20%の利益を保つことができた。この結果、アジア・メーカーの生産能力がどんどん大きくなり、欧州と日本のメーカーは閉鎖や海外移転を余儀なくされた。
中国・台湾メーカーは継続的に投資
2011年上期の世界的不況に直面したにもかかわらず、市場の掌握に積極的な中国メーカーは投資をやめなかった。その結果、2011年の投資額はおおよそ116億3000万米ドルになる見通しである。また、台湾の投資額は約17億9000万米ドルである(図1)。