ハードウエアとサービスを組み合わせたソリューションの全体提案は大変難しいものだと思いますが、逆に言うと、日本が新興国に対して差異化できる、大きな可能性があるとも言えます。

 本や雑誌の編集者という仕事は、日本でもアメリカでも女性が比較的多い職業です。腕はいいけれども、一癖も二癖もある執筆者や写真家などを、時にはおだて、時にはあしらいながら、力を最大限に引き出す。どの分野も一流になった専門家は個性的な人が多いですが、力を発揮してもらうには、曲者の執筆者と何とかコミュニケーションをとり、その人の拘りを共感することが必要になります。

 ただ、読者に受け入れられ、ビジネスとしても成功する本や雑誌を作るためには、執筆者の主張を全て鵜呑みにするわけにはいかないでしょう。消費者の動向や、出版ビジネスとしての経済性を考慮して、採算が取れるように、執筆者を誘導することも大事でしょう。

 技術とサービスをまとめて提案するソリューション・ビジネスに取り組む必要がある日本のエレクトロニクス産業においては、こうした女性が得意とする編集力や共感力は男性にとっても大事なスキルになると私は思います。

 さまざまな専門分野のエンジニアと密接にコミュニケーションを取り、各技術の現状や将来動向を見定める。いろいろな技術を統合するためには、バックグラウンドも、語る言葉もまちまちで、しかもひと癖あるエンジニアたちと意思疎通をしなければいけません。このような編集力が必要とされています。

 非常に難しい作業ですが、共感することで各専門家たちの本音を聞き出せるかもしれません。もちろん、その全ての意見を採用するわけではないけれども、一生懸命理解しようとする姿勢をわかってもらい、信頼してもらえれば、その後の仕事が円滑に運びます。それができる人は自然と他のエンジニアたちをまとめ、引っ張ることになるでしょう。

 そして、技術を理解した上で、ユーザーの視点に立って、採用する技術を見極める。サービスのビジネスでは、技術的な優位性やコストに加えて、ユーザーの視点に立った、使いやすさやデザインが大事になります。

 働く女性の方々は、仕事をしつつも、家事や子育て・介護など、二足、三足のわらじを履いていて、仕事と家庭の両立にジレンマを感じている方もいるでしょう。しかし、そうした泥臭い日々のプライベートな生活こそが段取り力を磨き、仕事で必要なサービスを考える良い機会になるのではないでしょうか。

 将来の市場の予測を行うマーケティングは、顧客に対して「将来、何が必要ですか?」と聞き取り調査をすれば、将来必要となる製品がわかるわけではありません。顧客は多くの場合は、今の技術でできること、現在の技術の延長線上で将来を考えます。

 そのため、ユーザーの聞き取り調査だけでは、将来必要な製品を明らかにすることは難しい。最も効果的なマーケティングは、エレクトロニクス製品を作るエンジニア自らが、ユーザーとなること。そして、エンジニアが、自分がユーザーとしてどうしても欲しいと思える製品を考えることです。