二酸化炭素排出削減を優先する必要はない

  ところが前記「エネルギー需給の長期見通し(再計算)」の供給予測では,原子力発電の寄与を,電力供給において49%,1次エネルギー供給において21%と,高く見積もっている。二酸化炭素排出削減に高い優先順位をおいているためである。

  どのエネルギー源が「良い」か,という選択において,「二酸化炭素を排出しない」ことが近年は重視されてきた。しかし筆者は,そしてFUKUSHIMA プロジェクト委員のほとんどは,二酸化炭素排出削減を優先する必要はないと考えている。

  「二酸化炭素による温暖化」には2009年に事件が起こっている。いわゆるクライメート・ゲート事件である。IPCC報告書に「科学的根拠」を提供してきた英国の内部資料が流失した。温暖化を示すデータの多くが意図的につくられたものであることが,わかってしまったのである(深井有,『気候変動とエネルギー問題』,中公新書,2011年)。以後,温暖化をめぐる世界の論調は大きく変わる。この事情については,別稿で紹介する機会があるだろう。ここでは結論をごく短く要約しておく。

  1. 二酸化炭素が地球温暖化の主因とする説の科学的根拠は弱い。
  2. 仮にその説が正しいとしても,温暖化には功罪両面あり,罪の方が大きいとは現時点では結論できない。
  3. したがって,経済的・社会的なコストをはらってまで二酸化炭素排出削減に努力する必要は,少なくとも現時点では,ない。

  震災後の日本の財政事情はきびしい。復興のための資金需要は緊急である。さらに先に述べたように,介護,年金など,資金はいくらあっても足りない。そのために日本政府は所得税も消費税も増税しようとしている。こんな状況のもとで,根拠も功罪も不確かな温暖化問題を優先する必要はない。これがFUKUSHIMAプロジェクトの基本姿勢だ。

  二酸化炭素排出削減を優先しないとなると,それを理由に原子力発電を選ぶ必然性はない。同じく再生可能エネルギーを選ぶ必然性もなくなる。他の利害得失がエネルギー源選択の理由となるはずである。

  ちなみに人口減少と高齢化は二酸化炭素排出減少に寄与する。2050年には,何もしなくても25%程度の二酸化炭素減少となる可能性が高い。