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HOMEスキルアップマネジメント技術経営戦略考日本の人口減少とエネルギー需給

技術経営戦略考

日本の人口減少とエネルギー需給

  • 西村 吉雄=早稲田大学大学院政治学研究科ジャーナリズム・コース
  • 2011/11/21 08:00
  • 4/6ページ

原発事故前の政府機関の長期予測でもエネルギー消費は減る見通し

  「家庭のエネルギー消費は人口減少に対応して減るかも知れない。けれども日本のエネルギー需要は産業用のほうが多い。産業用は減らないだろう」。こういう考えもある。しかし日本のエネルギー消費は合計で,すでに減少気味なのだ(図3)。その減少幅は,家庭部門より産業部門のほうが大きい(図4)。2009年度の産業部門のエネルギー消費は1990年度対比でさえ減っている。加えて家庭部門も2005年度からは減っている(経済産業省資源エネルギー庁,「平成21年度(2009年度)エネルギー需給実績(確報)」, 2011年4月26日)。

図3 最終エネルギー消費の推移 単位はPJ(ペタジュール)。経済産業省資源エネルギー庁「平成21年度(2009年度)エネルギー需給実績(確報)」(2011年)から  
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図4 部門別最終エネルギー消費の推移 単位はPJ(ペタジュール)。経済産業省資源エネルギー庁「平成21年度(2009年度)エネルギー需給実績(確報)」(2011年)から
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  これらの減少が,いずれも「節電」以前の結果であることに注意しよう。2011年に日本人は節電に目覚めた。その日本人人口がこれから急減する。日本のエネルギー需要が2009年度実績よりも増えることは,まずあり得ない。

  ということは,原子力発電に依存しなくても,中長期的にはエネルギー需給の心配はないと言えるだろう。実は2011年の夏,日本の原子炉のうち稼働していたのは2割ほどだった。原発がフル稼働したときの総電力への寄与は25%くらいである。今年の夏の原発の寄与は10%に満たない。それでも夏のピークを乗り切れた。もちろん,節電は,特に産業部門では大変だったろう。しかし原発の寄与が10%に満たなくても,なんとかなる。それがわかってしまった。

  3.11原発事故以前の2010年8月に出た「エネルギー需給の長期見通し(再計算)」(総合資源エネルギー調査会策定)は,省エネルギー努力をしない場合(現状固定ケース),従来通り続けた場合(努力継続ケース)と,省エネルギー技術・製品を最大限導入した場合(最大導入ケース)の3通りを試算している。ここでいう省エネルギー努力とは,2011年に一般化した節電努力のことではない。エネルギー消費の少ない電気製品を使う,省エネルギーに有効な新技術を導入する,などの努力を指す。これらの努力を一切しない現状固定ケースは現実的ではないだろう。以下では努力継続ケースと最大導入ケースの試算結果を紹介する。

  2030年度の最終エネルギー消費は,2005年度対比で,努力継続ケースで5.3%減,最大導入ケースで16.2%減,という予測である(図5)。人口は約10%減だから,省エネ努力によっては人口減以上にエネルギー消費が減ることもあり得る。これが経済産業大臣の諮問機関の予測である。

図5 最終エネルギー消費の推移予測 総合資源エネルギー調査会需給部会「エネルギー需給の長期見通し(再計算)」,2010年8月から
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  繰り返すが,ここには節電努力は反映されていない。ということは,節電をしなくても中長期的にはエネルギー需要は減る。多少の節電努力があれば,人口減以上にエネルギー消費減となる可能性が高い(川島博之,『電力危機をあおってはいけない』,朝日新聞出版,2011年)。

  すでに述べたように,2011年夏における原子力発電の寄与は電力で10%以下,総エネルギーへの寄与では5%以下だ。2030年に原子力発電の寄与がなくなっても,なんとかなる。震災前の政府機関の予測データを用いても,こう結論できるだろう。

  となると,新エネルギー源の開発を急ぐ必要はないことになる。中長期的にはエネルギー需要は減るのだから,無理にエネルギー供給を増やす必要はない。再生可能エネルギー源にも,これは当てはまる。再生可能エネルギーの寄与が本格化するのは,どうがんばっても,だいぶ先のはなしだろう。そうであれば,その開発・使用を急ぐ必要はない。

  必要エネルギーが長期的には減る見通しのなかで,どのエネルギー源が「良い」エネルギーか。時間をかけて見極め,周辺技術・環境を整備しながら,適材適所でエネルギー源を使い分ける。中長期的には,こんな姿勢で十分ではないか。

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