これから日本の人口は急減する。高齢化も進む。したがって日本のエネルギー需要も減る。少なくとも中長期的には,日本のエネルギー需給に大きな心配はない。「FUKUSHIMAプロジェクト」(http://f-pj.org/)の調査結果の一つである。このプロジェクトは福島原発事故を民間有志で調査・検証し,本として刊行しようとしている。

 このプロジェクトに加わって活動する過程で,私にはいくつか気になることが出てきた。一つは,日本の人口減少を問題にする人が,ほとんどいないこと。人口が減れば,エネルギー需要も減るに決まっている。それが,どの程度のものか。これを見ておかないと,エネルギー政策もたてられないはずだ。もう一つ,二酸化炭素削減を疑わずに前提にする人が多いこと。クライメート・ゲートと呼ばれるようになったIPCCのスキャンダル以後,地球温暖化をめぐる世界の論調は大きく変化している。FUKUSHIMA プロジェクトでは,これについてもタブー視せずに調べようということになった。以下に現時点での調査結果の概要を紹介したい。

100年後の日本の人口は今の半分以下

  日本の人口減少は急激である(図1)。2010年12月に国土交通省は「国土の長期展望に向けた検討の方向性について」と題するレポートを発表した。このレポートによると,日本の人口は2004年の1億2784万人がピークだ。今後100年間に100年前(明治時代後半)の水準に戻っていく。

図1 日本の人口の長期推移 国土交通省国土計画局「国土の長期展望に向けた検討の方向性について」(2010年12月17日)から
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  人口予測には高位・中位・低位の三つの推計がある。最も人口を多く予測する高位推計で,2100年の日本の人口は6407万人,ピークの約半分である。中位推計(こうなる可能性が一番高い)で4771万人。ピークの37%だ。

  もう少し近いところ,2030年には1億1522万人,ピークから1262万人減少する。比率では約10%減だ。2050年にはピークから3269万人減って,9515万人になる。26%減である。以上,いずれも中位推計を用いた。

  この急激な人口減少は高齢化を伴う。医療・介護・年金など,これからの日本には難問が山積する。しかしエネルギー需給は,たいした問題ではなくなる。これだけ人口が減る以上,エネルギー需要も減るに決まっているからだ。高齢化もエネルギー需要減少に寄与するだろう。

  少子化対策によって人口減をくい止めることができるのではないか。こういう反論があるかも知れない。その効果は,あるとしても,だいぶ先,2050年ごろからだろう。