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技術経営戦略考

中国での「ありえない」商談、その実情と教訓

  • 山田太郎=ユアロップ 代表取締役社長
  • 2011/11/18 10:00
  • 1/2ページ

 先日、日本企業が中国企業にある製品(機械)を売り込む商談に立ち会った。そこで繰り広げられた商談は、まさに日本と中国の商習慣の違い、考え方の違いを浮き彫りにしたものであった。何とか商談はまとめたが、日本側は何度挫けそうになり、何度「これ以上の商談を続けるのをやめよう」と思ったことか。その一部始終から得られる日中の商談の違いについて振り返りつつ、その場その場での教訓を書き出してみたい。

 ここは中国上海郊外。中国側は、地元で機械製造と販売を手掛ける中堅製造メーカーである。一通りの工場見学を終えて、和やかな雰囲気で昼食をとり、いよいよ午後から日本側が売り込む機械の商談に入るところだ。

教訓1:食事の席では、どんなにハードな交渉が待っていても和やかな雰囲気が崩れることはない。逆に食事がいい雰囲気だったからといって商談は別であると心得た方がいい

教訓2:食事は、中国人にとって最も大切な時間。仕事や商談、見学が途中であったとしても食事の時間を遅らせることはまずない。仕事優先でしばしば食事が遅れる日本とは違う

 日本からは、社長、海外(中国)担当取締役、担当営業、機械の技術責任者、通訳、私の6名。中国側は、社長、副社長、販売担当者の3名である。席につき、中国側の社長は長々と自社の歴史や地方政府との関係、技術開発に力を入れてきた説明を進めていった。日本では、会社の説明も製品の説明も担当役員やそれ以下の者に任せるケースが多いが、中国では社長が最もよくしゃべり、なんでも社長が自ら説明をする。たまに、担当の者が口を挟み説明を加えるが、すぐに社長が遮り細かい説明を続ける。会社の案内でも社長自らが説明することが多い。

教訓3:そもそも商談に社長が出てこない場合、あまりやる気がないと思っていい。それぐらい社長はどんな場合にも出てくるし、その場の大切な交渉や商談をそのまま部下に任せることは珍しい

 次に、日本側の説明になった。日本側はきちっと説明書を作成し、プレゼンテーションについてもきちっと紙を用意する。しかし、この紙を中国側に渡すと、突然、中国側の列席者はまともに日本のプレゼンテーターの話を聞かずに、目の前で紙をどんどん先に先に読み飛ばす。日本では、プレゼンテーターの話が詰まらなくても礼儀として最後まで聞く(聞いている振りをしている事も多い)が、中国人は、関係がないと思った説明はまず聞かない。

教訓4:中国の人たちは礼儀を重んじるが、合理的でもある。結論こそが重要で、余計な説明は実は嫌われる

 双方の説明が終わったので、中国側の副社長が切り出した。日本側の提出した見積もりを見ながら、「人件費が高い」「材料費が高い」といきなり値切り交渉に入ってきた。日本側は、突然のことに面食らっていたが、副社長は容赦ない。「人件費については、自分たちで何とかするのでここをもっと安くできないか」「材料も中国製で安い部材を使えないか」と攻めてくる。日本側は、「機械のメンテナンスはとても大切で、現地で十分教育を受けていないメンバーがやると壊れてしまう」「10年以上長持ちする機械は日本からの部品でないと賄えない」と反論する。しかし相手は納得せず、「中国側でも十分にメンテナンスは可能」「機械はまず3年持てば十分」と反論してきた。和やかな雰囲気は一変、価格をめぐって商談は非常に厳しい雰囲気に包まれていった。

 日本側は「いい品質」「いいモノ」と繰り返し主張するが、中国側は「安いモノ」と強い口調で押し返す。この重い雰囲気を打開するために、日本側は「価格の問題はさて置いて、ほかのテーマについても話し合おう」と提案する。しかし、副社長は、「いや価格こそが最重要問題」と主張、この話を延々と繰り返すことになった。

教訓5:中国の商談では、価格の問題がとても大きい。日本製品を取り扱う中国企業は、安い中国製品との闘いになるので、価格は死活問題なのである

 日本側が理解しておかなくてはならないのは、中国側は価格こそが最重要課題との認識から、商談前に関係者がストーリーをしっかり作っているということだ。むしろ、日本側の商談の進め方の方が行き当たりばったりだったりする。そもそも日本では、トップ同士での商談は「買うのは前提」ということで進められることが多い。見積もりはトップ会談での議題ではなく、基本合意後に担当同志で詰めればいいと思っている。だから日本では、価格が問題になっても「売る側」は価格を下げずに「おまけ」を付けてしのいだり、安くする場合はその代わりに数量を増やしたりと、長期的な取引関係を維持するために「痛み分け」というかたちで商談をまとめようとする。

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