異業種交流会とは異なる対話の場

 Xさんは架空の人物ですが、その他の出来事は今回のイベントで本当に起きたことです。Xさんが感じた印象は参加者の多くの気持ちを代弁していると、主催者の私たちは感じています。

 もちろん、恐らく、Xさんにとって、すぐに開発業務に生かせるアイデアを得られたわけではないでしょう。また、同じ内容を記したビジネス書が存在するかもしれません。でも、ビジネスの世界の門外漢である学生から鋭いアドバイスをもらえたり、査定や評価とは全く関係のない場で大企業の経営者と日本企業の将来を語り合ったりする体験で得た気付きは、ビジネス書を読むのとは異なる理解を感じさせてくれます。開発チームの同僚と議論したりするのとは、異なる発想やヒントの気付きがあります。会社の会議室とは異なるそんな場が日常のどこかにあったら、何かワクワクしてきませんか?

 今回紹介したようなダイアローグのイベントは、現実にかなり増えています。「ダイアローグ」や「ワールドカフェ」というキーワードで検索してみると、その流行を実感してもらえるでしょう。ダイアローグは、言葉を変えると、人々が“つながり合う場”です。

 これは、バブル華やかな頃に流行した「異業種交流会」とは異なります。個人的な印象では、異業種交流会のようなイベントは会社の看板を背負って「人脈を作ろう」「自分の本音を隠して、情報を手に入れよう」、あるいは「転職できるのはないか」といったギラギラとした目的をもった人々が集っていることが多かったように思います。「自己啓発セミナー」も同様のにおいを感じるのですが、言い過ぎでしょうか?

 ここにきて広がっている対話の場は、かつてのギラギラとした「交流の場」とは明らかに違います。そのスッキリとした雰囲気は皮膚感覚的で、言葉にするのはなかなか難しいというのが正直なところです。でも、多くの人々は「面白そう」という好奇心で参加し、イベントが終わると何となく結果的に「気付き」を得て日常に帰っていきます。ちょうど、お茶飲み友達とつき合うような感覚と言えば、分かりやすいかもしれません。

 「お茶でも飲みに行かない?」は、古代からの誘い文句ですが、お茶は単にのどを潤すだけではなく、もともと交流を促すきっかけになることはご存じの通りです。軽いお茶会の雰囲気が増せば増すほど、ポジティブに意見を交換する場が形成されやすい。この「お茶飲み指数」の高さが、従来の異業種交流会などとは決定的に違う部分です。

 この雰囲気は、ここにきて急速に拡大しているSNSやTwitterなどインターネットのソーシャル・メディアに良く似ています。時間と気持ちさえあれば、誰でも参加し自由に発言できる。ソーシャル・メディアと同じような場が、リアルな世界で実現しているわけです。実際、ダイアローグの会の開催案内は、ソーシャル・メディアを通じて告知されたり、自然発生的に始まったりすることも多い。これは、二つの場の親和性が高いからでしょう。

「会社人」から「社会人」へ

 我々がソーシャル・リーマンズと呼んでいる人々は、ほとんど例外なく茶飲み友達の雰囲気を身にまとっています。そして、社内と社外の活動を両方とも楽しんでいる。それでも、よくよく話を聞くと、ほんの少し前までは、多くのサラリーマンと同じ悩みを抱え、「何かが違う」とモンモンとした会社生活を過ごしていた人が多いのです。

 ソーシャル・リーマンズが集う会は、お茶飲みの場ですから、話を聞いているだけで楽しいし、刺激になります。前向きなパワーをもらえるのです。会社の同僚との宴会はたまに抜群に面白いこともあるのですが、気が付くと上司の悪口や愚痴合戦に終わる場合が多く、何となくネガティブな気持ちを残してしまいがちですよね。まぁ、それが面白いという考え方もあるとは思いますけれど。

 ソーシャル・リーマンを目指すこと。これを我々は「会社人」が「社会人」となることと考えています。そのキッカケになる機会は、インターネットのソーシャル・メディアから溶け出して、リアルの社会に広がっています。もし、「ちょっとしたキッカケ」となるイベントの開催を知ったら、少し無理をしてでも、一度参加してみてはいかがでしょうか。

 もちろん、キッカケはイベントだけではありません。この連載では、かなりあ社中の3人が自身の体験を交えて、少しずつソーシャル・リーマンズの世界を紹介していきます。その取り組みや手法は、社内でのアイデア会議など業務にはもちろん、会社の枠を超えた仕事を思う存分に楽しむためにも生かせるはずです。その詳細は、また次の機会に。

 ちなみに、かなりあ社中では11月22日に第2回のダイアローグの会を開催します(詳細はこちら)。テーマは、「私たち企業人はこれからどこに向かうのか」です。コラムを読んで活動にご興味を持った方は、我が社中のFacebookサイト(サイトはこちら)を覗いてみてください。ぜひ、意見を交換しましょう。