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HOMEスキルアップマネジメント新誠一の「言いたい放題」 > 独創性

  • 新 誠一=電気通信大学教授
  • 2011/11/08 08:00
  • 1/1ページ

 大学教員は教育者。もっとも,高校までの先生と違い教職免許は不要。最近は博士号所得が大学教員採用では必須となってきたが,これは研究に対する資格であり,教育ではない。私が教員となった数十年前。特に教育法に関するガイダンスはなかった。もっとも,業務に関するガイダンスも皆無であった。先輩の先生方の背中を見て教育を学んでいった。今は,どの大学も少しは改善されてきている。FD(Faculty Development)研修という教育法の研修や初任者研修が大学でも実施されている。世の中も変わったものである。

 さて,本日の本題は大学のINとOUTのミスマッチである。大学のIN,すなわち入学試験については大変な労力と時間をかけている。入試問題は解けるもので,かつ唯一解となるものがほとんどである。解が複数あると採点が難しい。もし,解が複数あることを出題側が気付いていなければ大騒ぎになる。だから,「与えられた条件は全て使え」が受験テクニックとなる。試験後に答え合わせをしている受験生は,同じ答えであれば大変満足である。

 しかし,実社会では「同じ答え」はとてもまずい。別な企業から同じ製品が出てはまずい。別な研究者が自分の研究課題の答えを発表してはまずい。故意,偶然に関わらず同一の答えはまずい。

 学生さんに,この単純な原則を理解させることが難しい。大学のOUT,つまり卒業研究では新しいことを見つけなければならない。それが研究である。そして,卒業研究発表以前に誰かが,その内容を発表してしまえば卒業できない。

 実際には別解探しが大きな仕事である。一つの結論を別な道から論証すれば,それは研究としての価値を持つ。商品開発も同様である。同じ機能を別な仕組みで実現するということは日常業務である。

 大学教員の仕事は同一解を喜ぶ学生,他人のレポートをまる写しにする学生,Webサイトを巡ってコピペでレポートをでっちあげる学生にオリジナルな仕事をさせることである。そのようにマインドを変えていくことであり,独創性を磨かせることである。

 やらなければいけないことは明らかであるが難しい。愚痴っていてもいたしかたないので,私の取り組みの一部を紹介したい。講義中に「しりとり」をしている。しりとりというよりも,同じ事を言ったらブーである。たとえば,ボールペンを取り出して最初の学生に問う,「これは何?」。彼/彼女は答える,「ボールペン」。OK,次の学生がボールペンと答えると,ブーである。ボールペンは既に出た。同じ質問に違った答えを出せるかがポイントである。

 独創性が開花していなければ,同じ答えを禁止された時点で答えに詰まる。独創性を発揮して欲しい。私がボールペンをかざして聞きたいのは,ポインターであり,千枚通しであり,武器という別解である。それなのに「筆記用具」と逃げる学生もいる。独創性は未開化である。もっとも,汎化という概念につながるので,気が向いたらそちらに話が展開することもある。

 さて,話を戻し,一つの物から何通りの別な解釈を思いつけるか,それが独創性に一つの尺度になる。もちろん,独創性だけでは足りない。それを出発点にして製品開発,研究のストーリーが浮かばなければならない。そのストーリーは筋が通ってなければいけない。つまり,論理性が要求される。

 面白いアイデアがあり,しっかりした論理で補強されていれば盤石かといわれると,まだ足りない。その素晴らしさを他人に分かってもらえなければ学問にはならない。もちろん,商品にもならない。だから,明解性が三番目に必要となる。

(1)独創性
(2)論理性
(3)明解性

この三点の軸を用意すれば,学生や技術者の研究・開発能力をある程度測ることが可能である。記憶力と論理性は入試で測ることはできる。明解性もある程度測ることはできる。しかし,独創性を問う入試問題は少ない。昔はあった。しかし,今,そのような問題を出すと奇問と怒られる。大学の4年間で学生の独創性に磨きをかけたいが,なかなか思うようには進まない。教育は本当に難しい。

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