写真1●大和ハウス工業のスマートハウス「スマ・エコ オリジナル」で用いる家庭用リチウムイオン電池
写真1●大和ハウス工業のスマートハウス「スマ・エコ オリジナル」で用いる家庭用リチウムイオン電池
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写真2●日立コンシューマ・マーケティングがCEATEC JAPAN 2011の会場で見せた家庭・事業者用リチウムイオン電池のモックアップ
写真2●日立コンシューマ・マーケティングがCEATEC JAPAN 2011の会場で見せた家庭・事業者用リチウムイオン電池のモックアップ
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 電力不足や計画停電に対する備えから今、注目を集めているリチウムイオン電池を使った家庭用蓄電池システム。しかし、その商品化に大幅な遅れが生じている。

 大和ハウス工業は、蓄電池システムの制御機能を備えたスマートハウスを2011年10月に発売した(写真1)。他社に先駆けて発売できたものの、当初予定していた「2011年の春ごろ」というタイミングから、半年ほどずれ込んでの発売になってしまった。理由は「蓄電池の安全性で第三者認証を得るのに時間がかかったため」(同社取締役常務執行役員の濱 隆氏)だという。

 日立コンシューマ・マーケティングは2011年10月4日~8日に開催された「CEATEC JAPAN 2011」で、家庭および事業者用の蓄電池システムを披露した。しかしそれは、正興電機製作所が開発した制御系と鉛蓄電池(電池セルは新神戸電機製)を用いたもの。リチウムイオン電池を使った蓄電池システムもその隣に展示していたが、それは中身のないモックアップだった(写真2)。「まだ安全性をクリアできていない」(同社説明員)からである。

 ほかにも安全性を考慮してリチウムイオン電池による蓄電池システムの商品化に踏み切れないメーカーは多い。大容量リチウムイオン電池の安全性確認が、商品化のボトルネックになってしまっているのである。

消防法では危険物に該当

 その背景には、太陽光発電の電力を貯蔵するような大容量の蓄電池システムについては、携帯電話機などに使う小容量のリチウムイオン電池のように標準化された安全基準がまだないことがある。一方で、東日本大震災以降、海外製のリチウムイオン電池を搭載した蓄電池システムがどんどん日本市場に入り込んできている。蓄電池システムの普及を促す政府の支援制度の検討も始まり、国税を投入する対象とするには一定の安全基準を早急に設ける必要があった。

 このため、国内の電池メーカーで構成する電池工業会が業界規格として「産業用リチウム二次電池の安全性試験(単電池及び電池システム):SBA S1101」を7月29日付で発行した。ただし、これは電池メーカー側の自主的な基準である。今回の震災に伴う福島第1原子力発電所の事故では、内部関係者による安全基準の問題点が浮き彫りとなった。こうした状況から「メーカー側の自主基準では、もはや周囲は納得しない」(電池の安全性に詳しい関係者)との見方が増えている。

 そこに追い打ちをかけているのが、消防法による規制である。