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竹嶋徳明
2011/11/03 00:00
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 これまでの連載で、読者の皆さんは、とりわけ物事を判断したり行動したりするときの「価値観」という考え方と、考え方を実践する能力である「価値観力」の必要性や重要性について十分に認識されたと思います。それでは、どうすればこの価値観力を高めることができるのか、考えてみることにします。

(1)高い価値観力とは

 価値観力を高める方法を展開する前に「高い価値観力とは何か」「高い価値観力の保持に必要なこととは何か」を考えてみる必要があります。

 第1は、適正な倫理観・道徳観に基づいた「健全な価値観」を持ち、それに基づいて判断・行動ができることです。人間は多くの場合、家庭生活や集団生活、社会生活を営む動物です。親兄弟や親戚、近隣、学校、所属する組織(会社など)に迷惑のかかるような判断や行動を生み出す基となる価値観は、誰にも支持されない「低い価値観」だと考えられます。傍から見ていて、頭で納得できるもの、心が温まるもの、人の道に恥じないものに基づく判断や行動は、明らかに「高い価値観」の産物だと言えます。

 第2は、その価値観の「ユニーク性」や「斬新性」、「革新性」などです。他の人とあまり変わらない価値観を持ち、同じような考えで判断や行動をしていても、他人や社会が注目するような判断や行動の結果が得られることは少ないと考えられます。創造に結びつくのはユニークで、斬新性があり、革新的な価値観です。

 第3は、価値観に対する「心の柔軟性」です。人間は総じて自分の考えや価値観を変えたくないものです。自分の価値観にこだわることも、もちろん大事なことですが、場面や事態、時代によっては他人の「価値観」に注目し、耳を傾ける心がけ(傾聴力)も大切です。常に自分が絶対的に正しいということはありません。他の価値観を理解し、場合によっては受け入れることも必要です。

 第4は、第3に近いのですが、自分の属する「組織の価値観」と「個人の価値観」との調和です。会社など社会の組織には、その組織に固有の「価値観」があります。「社是」「経営理念」「方針」などと呼ばれているものです。組織の価値観が、自分が普段から保持している価値観に含まれない場合であっても、組織に属している以上は組織の一員としてその価値観を「自分のもの」として取り入れ、これに基づいた判断や行動ができなければなりません。ただ、組織の価値観が自分の価値観と大きく異なる時は、二つの価値観をよく検討し、より統一性の高い価値観を受け入れるか、あるいは新しい価値観を作り出す必要があります。

(2)価値観力を高める方法

 それでは、どうすれば自分の価値観および価値観力を高めることができるのでしょうか。すなわち、筆者が上記で「高い価値観力」と定義したものに、どうしたら近づけることができるでしょうか。

 まず第1に挙げた、適正な倫理観・道徳観に基づいた「健全な価値観力」を持つ方法を考えてみましょう。適正な倫理観・道徳観は、子供の時に家庭や学校で「刷り込むべきもの」で、善いこと・悪いことの判断力に関わるものです。悪いことをした時には、親や先生、周りの人がしっかりと叱り、善いことをした時には褒めてやることによって、子供のうちから「健全な価値観」が醸成され、大人になってもこれが保持され続け、判断したり行動したりする時のベースとなる「健全な価値観」の持ち主となります。

 第2に挙げた、ユニークな価値観や斬新な価値観、革新的な価値観などはどうすれば身につくのでしょうか。世の中、「無」から「有」は生まれません。ユニークな価値観や斬新な価値観を身につけるためには、まず先人の教訓や古来の格言を真摯に学ぶことです。中国の賢人の言葉や、日本の経営の神様と称された人たちの言葉には、なにか「心を打つもの」ものが多くあります。

 そこでいろいろな本を読むと、自分が気づいていなかった考え方や価値観を見つけ出すことがあります。多くの本を読むことをお勧めします。読書で得た先人や先輩の考え方、価値観を整理し、「これは」と思うもの、共感できるものは、従来からの自分の価値観と照合して、新しい価値観として「自分なりのもの」を作り出し、頭の中や心の中に刻み込んでおきましょう。人から学んだもので「本当に、ユニーク性や斬新性、革新性があるのか」との疑問があるかもしれませんが、筆者には何もないところに突然ユニークで、斬新な判断・行動を生み出す「価値観」が生まれるとは考えられませんので、先学の教えや考え方をまず学ぶことが大切だと考えています。

 新しいことを好む、新しいことにチャレンジする、場合によっては危険なことにも挑戦する、というようなことに繋がるような考え方や価値観を作り出し、自分の価値観として確立していくのが、創造性に繋がる価値観を高めるための有効な方法だと考えられます。

 第3の価値観に対する「心の柔軟性」ですが、人は同じようなケースでも、異なる価値観、あるいは場合によっては矛盾する二つ以上の価値観を持っている場合があります。この場合、どの価値観を選択し、保持すべきかに迷います。矛盾するものを統合できれば、それは素晴らしいことです。

 通常、人は「その時の気分」で価値観を選ぶことが多いと思います。その場合でも事態の安易さや誘惑などに負けるのではなく、あるいは一時的に心地よい価値観にしがみつくのでもなく、適用する価値観を冷静に眺め、柔軟に選択できなければなりません。

 こうした能力も普段から訓練して高めておかなければ、非常時に適切な判断・行動を必要とする時に、惰性に流されて不適切な価値観を選択し、大きな失敗をしてしまう恐れがあります。難しい哲学を学んでおくのは、こうした時に役立つのかもしれません。

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