(1)はじめに

 ものごとを判断するときに視座力や視点力、価値観力が大切であることは、今までの説明で読者の皆さんに十分にご理解いただけたと思います。その中で、視点力とは、ものごとを考えるとき、何に目を付けて考えるかを意識する能力です。また、何かを実行するときに、最適な案を策定するために必要となる事柄を洗い出し、その内容をリストアップする能力です。

  連載第10回の「視点力を高めるために」で、視点力を向上させる方法として二つ挙げています。一つは、ものの見方の「視野を広める」ことにより、ものを見る範囲を広げたり、見ているものと一見関連性のないことまで広げたりすることを紹介しています。もう一つは、「高い視点」からものごとを観察して、入手した情報を分析することで、例えば問題形成をし、仮説を持って主張する心構えを持つことなどです。

 ここでは、視点力をさらに強化するために、上記の方法で洗い出されたいろいろな「視点」を、その「属性(attribute)」と「属性値(value)」で表現するという「知識表現モデル」を採用し、ものごとを判断する際により視点力を発揮しやすいような「視点の整理」を行ないます。そして、この整理結果を活用して、目標や価値観から、いくつかの解決案の中から実施案を選択するプロセスについて説明します。

(2)知識表現モデルによる視点の整理

 いくつもの解決案の中から実施する案を選択しようとする時、実にいろいろな「視点」を用いていることが分かります。例えば、ある問題の解決案を選択するのに、仮にA、B、C、Dの四つの視点を取り上げている例を考えましょう。

 それぞれの視点は属性を持っています。例えば、解決案の一つであるXについてみれば、視点AはA1、A2、A3という三つの属性を持っており、その属性値はax1、ax2,ax3だとします。属性値は具体的な数値であっても、大、中、小のような抽象的な言葉での表現でも可能です。

 こうして視点を属性と属性値の一対で表現し、表1のような解決案Xの視点別属性・属性値リストを作成することができます。視点B、C、Dについても同様に作成し、表1のようにまとめます。

タイトル

 同様にして、解決案Y、解決案Zなどについても、視点別に属性・属性値リストを作成します。

(3)解決案の評価と選択

 ある問題を解決するのに、意思決定者はいくつかの解決案(上記の例では解決案X、Y、Zなど)について、目標や価値観などから判断のために重視する「視点」と「属性」を選択し、これを解決案評価表としてとりまとめ、実行案を選択します。上記の例で、意思決定者が判断のために重視する視点、属性として、解決案X、Y、Zに共通的なものとして視点Aとその属性A1、A3、および視点Cとその属性C2を、個別的なものとしてY案についてBとその属性B2を、Z案について視点Dとその属性D2を選んだとします。この場合、解決案評価表は表2のようになります。

タイトル

 意思決定者は表2の解決案評価表の属性値から判断して、解決案X、Y、Zについての「評価」を行ない、3案の中から実施妥当な案を一つ選択します。