夏期節電対応に追われた夏が終わった。生産量を減らすとか、我慢するといった“その場しのぎ的な省エネ”で苦労された現場も多かったのではないだろうか。これから今一度、モノづくりの中で本質的な条件を見直していくインプロセス型の省エネ(=正エネ)を目指して再出発しよう。

 今回は、これから冬期に向けて期待できる省エネ(正エネ)の視点を紹介したい。事例は冷却水だ。冷却水は、ものづくりを支えるユーティリティとして、十分かつ安定供給が使命である。また、エネルギー消費量で言えば大きな割合ではないこともあるせいか、ポンプの高効率化、台数・負荷制御、インバーター化などのテーマを掲げる現場はよくあるが、実際に消費個所での削減事例は少ないようだ。

 ここでは冷却水を事例に、隠れたムダを発見し、改善していくコツを紹介したいと思う。

冬場に向けてチャンスあり「冷却水」

 冷却水は、製造条件を支える役割や、機器の保護などに使われていることが多い。製品製造・加工条件に直接関わる場合は、機能条件・管理値が厳密に管理されていることがほとんどである。一方で「保護」や「冷却」として使われる場合は、管理基準や日常点検表には「基準:●●度以下」などと表現されていたり、圧力や流量の値を「●●以上」などと管理されていることがないだろうか。

 このように「以上」や「以下」といったユーティリティの管理項目には、ムダが隠れていることが多い。もし読者の現場でも思い当たる節があれば、これから冬場を迎える現場にとってチャンスとなるテーマである。これを事例をみながら考えていこう。

事例「油圧装置油冷却・金型冷却」

 ある成形機周りの冷却と点検表のイメージを図1に示す。

図1●成形機と冷却イメージ
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 この事例では、以下のような「気づき」があった。

(1)油温度は実際に管理温度より低温で管理されており、冷却過剰によるロス※があった
(2)成形機の稼働に関係なく常時通水されており、冷却水送水動力及びチラー負荷ロスがあった
(3)金型各部の冷却も、管理が「●●以上」となっており、過剰な供給ロスがあった
(4)供給ポンプもインバータ化されていないため、たとえ流量を減らしても省エネ効果が刈り取れない

いずれも、管理が「以上」「未満」といった状態になっていることで、条件が変わっているときにロスが発生している点で共通している。