中国での白物家電事情

 白物家電も戦国時代だ。地場メーカー、日本勢、韓国勢、欧州勢、多数のメーカーが参入している。

 例えば冷蔵庫について、少なくとも次のブランドがある。

4ページ目、”海外メーカーは数社しか参入していない” →”欧州――Simense、BOSCH、Electrolux
韓国――Samsung、LG
日本――パナソニック
中国――Haier、Meling、Mediaなど10社以上

 日本の家電メーカーでは、パナソニックだけが健闘している模様だ。日本の冷蔵庫市場には日本メーカーは数社しか参入しておらず、海外メーカーはほとんどない。競争相手、競争範囲は比較的に限定されている。中国の市場は、数多くのメーカーが参入し、それぞれは自分の強みを活かし、どの国よりも多彩な冷蔵庫が売り出されている。

 上記は、セットの視点から量販店の家電を考察した。その裏にあるデバイスの世界も、似ているような流れが展開されている。例えば、携帯電話やプレーヤーのデバイス市場では、韓国勢、日本勢、台湾勢が激しい競争を繰り広げている。

 量販店から出て街を見ると、さまざまなブランドの車が走っている。日欧米の大手自動車メーカーからの直輸入品、日欧米の大手と中国地場メーカーの合弁企業からの合資ブランド、中国地場メーカーのブランド、三つの勢力が混在している。家電やIT関連の製品と同様に、自動車の領域も同じ現象が起きている。

 これは、改革・開放の国策と、市場で技術を交換するとの施策により、生まれていた業界の構図である。今後も、このような展開が続くと見られる。

まとめると、

・どのジャンルの商品でも、多くの国からの多数のブランドが揃っている。
・複数の技術方式が存在すれば、どの技術方式の製品も必ず揃っている。
・中国メーカーは、海外勢との競争の中で技術の実力をつけ、そして追い越すほどの勢いを見せている。
・海外メーカーは、中国メーカーが先に導入した機能を取り入れて「現地化」を加速、ブランド価値を生かして市場での地位を維持している。
・多くのメーカーの競争の中で、新たな方式、新たな機能などが生まれ始めている。

このように、中国は世界最大のイノベーションの実験場と言えるだろう。

 世界に名高い日本のメーカーは、品質においては世界で一番厳しい日本の消費者に育てられたと言うそうだ。それと比較すると、競争においては世界で一番厳しい中国市場は、世界最大のイノベーション実験場になったと感じている。

 次回は、「最大のイノベーション実験場(2)」というタイトルで、中国のエコシティーなどのブームから、グローバル企業は先端技術も中国へ積極的に投入し、次の未来を開く動きになっていることを紹介する。