(5)視点を構造化する力

 視点は単独のものばかりではありません。構造を持たせることもできるのです。中でも一番簡単なものは、同じ言葉を共通して持つものを集めたもので、「同種視点」「同類視点」と名付けました。それでは、例として「○○技術」という視点のグループを示しましょう。

 製造技術、使用技術、栽培技術、調理技術、培養技術、通信技術、指導技術、飼育技術、処理技術、組み立て技術、映写技術、撮影技術、照明技術、録音技術、土木技術、建築技術、科学技術、計測技術、医療技術、受験技術、販売技術、制御技術、生産技術、加工技術、運転技術、製作技術、制作技術、電子技術、製薬技術、製菓技術、登山技術、軍事技術…です。

 この視点群は、単に技術という言葉が付いているものを集めたに過ぎませんが、これらを使う工夫ができます。例えば「思い付きのきっかけ作り」や「見落としの有無のチェック」などに使えるのです。

 次に、例えば「数」という視点のグループを考えてみましょう。対数、真数、約数、倍数、素数、仮数、基数、指数、整数、自然数、分数、小数、循環小数、正の数、負の数、実数、虚数、複素数、超越数などは、高等学校の教科書にも出てくる「数の構造」を持っていますね。これらの視点は「数の構造」の下位視点群で、「数」というものの「要素視点」なのです。

 これに対して、概数、係数、個数、算数、多数、大数、点数、頭数、内数(うちすう)、人数、端数、半数、全数、歩数、本数、枚数、未知数、無数、文数(もんすう)、理数、戸数、世帯数、手数、ページ数、チーム数、ゲーム数、カット数などは、分類しなければ構造を持ちませんね。でも、挙げてみたりチェックしてみたり分類してみたりすると、結構、頭の体操になります。

 大切なことは、これらの視点や視点群をどのように利用するか、そしてどのように利用しやすいように加工するか、利用の知恵をどのように獲得するか、です。加工には、それぞれの知恵が求められます。私はまず視点の意味を把握すること、続いてグループに分けること、グループに名称を付けること、名称を使っていつでも取り出せるようにすること、さらにグループ同士を結合して構造を見つけ出すこと、構造を作り出すことなどが大切だと思っています。

(6)視点をメタヒントとすること

 視点は、単なる視点ではありません。視点を設定して、その視点からターゲットの中の何かを取り出そうとすると、一種のヒントとなります。あるいは、視点から問題事態の中にある何かを掴むきっかけにもなります。視点と視点の結合から、新しい物事の見方を考え出すヒントもできるはずです。そうです。視点は、時には考えるヒントやヒントのヒント(メタヒント)になるはずです。

 「メタヒント」は私の造語ですが、思考やアイデア作成、問題解決の「道しるべ」の意味で使っています。視点は人が知ろうとして着目した点ですが、着目したことが「道しるべ」になる可能性を持っていると考えるのです。こうした考え方が視点力アップに繋がるものだと、私たちは考えています。