(3)視座・視点・価値観を意識し推測する

 さて、講義や講演で自動販売機や商店街でのショッピングなどから、視座・視点・価値観を出した後、仕事などで取り組む対象について、この考え方をする動機付けを行ないます。私は受講生たちに対し、用意した新聞記事から視座・視点・価値観を出す練習を勧めています。

 例えば、ある社会現象に対して、どこに注目して(視点)記事が書かれているのか、どんな人々(視座)がそこに関わったのか、そして書かれた事実はどうして起こったのかなどを考えさせ、さらに書かれている人たちの価値観や、記事を書いている人の価値観、そしてそれを読む読者の価値観にも思いを至らせ、記事から多くのことが汲み取れる訓練をさせます。

 ある対象について視座・視点・価値観を出すとき、出す本人が未経験の視座に立って考えることが多くなります。この目的を達成するために、私は未経験の視座に立って推測し、必要であれば推測したことを仮説として、実地調査をすることを指示します。

 この他の方法としては、実際にそれぞれの視座の人たちが、実際にどこに視点を置き、どんな価値観を持っているかを実体験することが必要であると思っています。すなわち、さまざまな視座の人たちが発する情報に接し、情報の背景を知り、人の心を分析しておくことで、視座力・視点力・価値観力が育くまれていくと考えています。

 先に挙げた新聞記事を読み取るやり方は、一つの方法です。他に、さまざまな分野の著作物に触れたり、日頃から多方面の人たちとの交流を行なったりして、多面的な情報を得ておき、得た情報に対して視座と視点と価値観のセットを考える習慣をつけておくことが必要であると思います。

 視座・視点・価値観とそのセットを教える時に大切なことは、これらを意識しながら身近なことから受講生たちに気付かせること、視座・視点・価値観の考え方の大切さを伝えていくこと、この考え方を通じて情報分析力や情報総合力を磨くことが、今後の能力アップに必要であると考えています。

 そして視座・視点・価値観の考え方は、筆者の関心事であるシステム開発のみならず、毎日の仕事や日常の生活・教育・子育てなど、あらゆるところで利用できることを、受講生全員が分かるようになれば幸いであると、教える側の者として願っています。