(2)戸惑う受講生への対処

 ところが講義や講習を進めていくと、視点の出し方に戸惑う受講生が出てくることがあります。そんな時、自分の日常生活を考え、自分をいろいろな立場の人に置き換えてみるように促しています。あなたが何かをしようとするとき、どこに注目していますか。そんな問い掛けをします。

 例えば買い物をする時、あなたは商品のどこを見ていますか。毎日食べる食品であれば新鮮さや好きか嫌いか、身体に良いか、調理しやすいか。また、たまに買う衣類なら自分の体型に合うか、自分に似合うか、好みの色や生地か、着て行く場所の状況に合っているか、などです。このように買うモノや状況によって、目の付け所が異なるでしょう。でも価格は、何を買うときでも共通して見ているでしょうと言います。

 このように買う対象について、どこを見ているかを表したのが「視点」なんですよ、と解説します。そして、そのうちのいくつかを天秤にかけて(頭の中でよく判断して)買うでしょう。例えば、高価だが珍しいモノを買いたい時は、「価格」という視点より「珍しさ」という視点の方が優先されますね。その時は「珍しいモノがほしい」という思いが強かったからでしょう。それがその人の価値観なのですよ、と話をしていきます。

 日常でも何かを選択する時、対象をいくつかの視点で評価して、価値観を基準に決定している過程を意識させます。さらに、これを他の視座まで広げられるようにしていきます。どうしても視点が出て来ない受講生には「経済性」「安全性」「話題性」「信頼性」「信憑性」「発展性」「リスク」「信用の度合」「魅力」など、ものごとを評価する言葉を刺激材料として出してみることを試してみています。

 ところが最近、私に強敵が現われました。ネット検索です。検索エンジンで「視点」や「価値観」を調べると、多数出て来るようになりました。さすがに「視座」については多くは出て来ませんが、検索の仕方によっては「視点」と同じ意味にたどり着くことがあります。いずれにせよ、ネット検索で出て来るこれらの言葉の意味と、私たちが使っている「視座・視点・価値観」の意味とは、やや異なることがありますので、初めてこの言葉に触れる受講生たちには、用語の定義を明確にしておく必要があります。