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中国発、日本経由、グローバル

内に秘めたハングリー精神で世界に、徐剛氏(下)

加藤 幹之=Intellectual Ventures 上級副社長兼日本総代表
2011/11/07 07:00
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 前回から紹介している徐剛(ジョ・ゴウ)氏は、天安門事件を契機に、日本に留まり、日本人と肩を並べて生きる決意をした。今では、立命館大学の教授職と同時に、三次元メディアというベンチャー企業の社長も務めている。

 後にベンチャー企業を創業する人物が、なぜ大学の教員という職を選んだのか。大学教授として安定した道を進みつつあった教授がなぜベンチャーの創設というリスクを選んだキッカケは何だったのか。話をすると物静かで物腰の柔らかい、企業を立ち上げる雰囲気ではない徐教授の人生感の変化に、かなり興味を抱いた。

動画 三次元メディアが開発した立体視による産業用ロボット・ビジョンのデモ
二眼式カメラで撮影した映像を用いて物体の形状と位置を自動で見分け、バラバラに置かれた部品の中から所望のものを高速でピックアップできる。(約1分の動画)

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 そもそも、日本で博士号を取得した当時は、ビジネスには全く興味がなかったらしい。大学の研究者としての道を選んだのは、「大学の教員には自由がある」ということが一番の理由だったようだ。これは多くの若手研究者に共通した気持ちだろう。

 立命館大学に職を得たのも、たまたま母校の大阪大学の研究室がなくなり、別の仕事を探していたからだ。立命館大学から声が掛かり、若手でも独立して研究を進められる自由な気風を気に入ったのだという。

 ただ、徐教授はそこからが普通とは違っていた。自由ではあるが、大規模な開発や研究ができない大学の教員だけでは窮屈になっていたのだ。

大学教授に自由はあるが,大きなことができない

 直接のキッカケは、大手企業と一緒に手掛けた製品開発だった。1999年頃のこと。ある企業が、ソフトウエア開発のために徐教授の知見を学びにやってきた。

 複数の画像データを使って画像中の3次元情報を抽出し、画像中の物体間の距離などを計測するソフトウエアの開発だった。その企業に依頼され、徐教授は開発に使える技術を講義した。すると、自分の研究で培った知見が製品になった。これが、徐教授にとっては目から鱗が落ちる思いだったようだ。「自分の研究は世の中の役に立つ製品になるのだ」と強く実感した瞬間だった。

 ちょうど、「大学教授には自由があるが、リソースが限られており、大きなことができない」と思い始めた時期とも重なったようだ。新技術は確かに研究室で生まれていた。だが、開発を手掛けた学生は卒業するので、ソフトウエア開発の継続性は乏しい。研究予算も限られる。

 “たまたま”は、さらに重なる。同じ頃、徐教授は天安門事件から10年がたった北京に、大学のサバティカル(長期有給休暇)制度を利用して滞在した。現地にできたばかりの米Microsoft社の研究所の研究員として、である。

 徐教授は、ここで半年を過ごしたが、実は自らには別のミッションも課していた。日本企業が中国で研究所を立ち上げる手伝いができないかと考え、いくつかの大手企業にコンタクトを取ったのだという。その後の日本企業の中国研究所ラッシュを見れば、先見の明には感心するばかりである。しかし、当時の日本企業では、まだ研究所の海外進出は今ほど進んでおらず、実際にはその機会はなかった。

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