これまで産業用ロボットは眼を持っていませんでした。ロボットに移動させる物体が、あらかじめ決まった位置に置いてあるという前提だったからです。

 三次元メディアの技術は、部品箱にバラ積みでも部品をピックアップして移動できる技術で、これから生産現場で使われていく技術になります。だから、現段階では正確な市場規模は分かりませんが、いずれは年間1万台規模になるのではないかと見込んでいます。新開発のロボットシステムは基本の価格が1台当たり350万円ですので、かけ算すればだいたいの市場規模が出るかもしれません。

 その入り口に、三次元メディアは立っているということです。これまでも、いろいろな製品を開発してきましたが、後追いのものが多かった。今回の新製品は、先端を走っていると自負しています。

加藤 日本でベンチャー企業を経営する難しさはありますか。

加藤氏
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 世の中では、日本はベンチャー企業を経営しにくいと言われているようですが、私は特にそれを感じたことはありません。多くの人々から好意的な支援をいただいたので、とても感謝しています。あえて挙げれば、人材の流動性が低いことでしょうか。人材確保には苦労しています。基本は終身雇用ですから優秀な人があまり動かない。資金は集められても、優秀な社員を集めるのは大変です。

 ただ、最近は若い人でも優秀な人がベンチャー企業を選んでくれるようになってきました。大企業が安定しているとは限らないし、みんなが大企業に入れるわけではないですから。以前に比べれば、優秀な人材を確保できるようになってきました。

加藤 資金面では、あまり苦労しなかったのでしょうか。

 苦労がなかったということはないですが、それは当たり前だと思うのです。うなるほど資金があるベンチャー企業の方がおかしいのではないでしょうか。少ない資金でやり繰りして会社を成長させるのがベンチャー企業でしょう。

 三次元メディアも、ベンチャーキャピタルなどから出資を受けています。会社の将来性を見込んでいただいてるということですから、私にはこの会社を成長させ、上場を目指す使命があります。

加藤 それが徐さんの原動力になっているわけですね。

 そうです。

加藤 御社のようなベンチャー企業を選ぶ若者たちのモチベーションは何ですか。

 やはり、夢だと思います。「これが実現できたらすごい」「リスクはあるけれど、うまくいったら面白い」と思ってくれているのではないでしょうか。

加藤 それはいいですね。むしろベンチャー企業に若者が挑戦する環境になるといいと思います。

 最近は、海外展開の布石も打っていまして、英語で仕事ができる社員も何人かいます。明確な計画はまだありませんが、やはり海外市場の割合が高くなっているので。

 かつては、産業用ロボットの世界での生産台数のうち半数は日本国内で使われているといわれていましたが、今は2割程度に減っています。残りは、中国、中国以外のアジア、欧州、米国がそれぞれ2割ずつです。国内にとどまっていては、三次元メディアが手掛ける分野で世界一にはなれません。

(次回に続く)