これまで視座、視点、価値観についていろいろと説明してきましたが、より理解を深めてもらうために、レストランを例にして図を使って解説します。また、図式化することによって、思考を深められる可能性も示してみたいと思います。

(1)視座図

 「視座、視点、価値観とは」の項で紹介した視座には「お客さん」「店員」「店長」「外部の関係者」が登場しています。そして、「お客さん」には「ファミリーレストラン好みのお客さん」と「高級レストラン好みのお客さん」がいます。「店員」には、「接客担当」「厨房担当」「仕入れ担当」がいます。また、「店長」は「管理者」と「経営者」の役割を持っています。さらに、「外部の関係者」には「仕入れ業者」や「金融機関」があります。

  これらの視座と対象物であるレストランを図式化した「視座図」は、次のように描くことができます。楕円は対象物で、矢印の方向は各視座から対象物を見る視線です。

図 レストランの視座図
《 》は視座群を表し、〔 〕はその内訳視座を表している

 このように思考の結果である視座を図で表すことで、視座を客観的に認識しやすくなり、「視座意識」がやりやすくなります。また、「視座交換」(例えば、店長が自分の視座を店員やお客さんの視座に変えること)もしやすくなります。そして、視座力を強化させるツールの一つになります。

(2)視点図

 「視座、視点、価値観とは」の項で表れた視点には、「満足感」「お客さんの態度」「お客さんの満足度」「食材の品質」「給料」「コスト」「売り上げ」「リピート率」があります。そして、「満足感」の内訳として「店の雰囲気」「料理の品質」「価格」「待ち時間」があり、さらに「店の雰囲気」の内訳として「店員の接客態度」「調度品」「店内の静かさ」「店の明るさ」が表れています。

 これらの視点を図式化した「視点図」は、次のように描くことができます。楕円は対象物で、矢印の方向は対象物に対する着眼点を引き出しています。

図 レストランの視点図

 このように、思考の結果である視点を図で表すことで、実に多くの視点があることが分かり、「視点拡大」になります。これでも、すべての視点を書き合わせたわけではありません。また、「満足度」や「店の雰囲気」のように視点には階層があることも分かります。視点図を作成することは「視点力」を強化することになります。