先月,本コラムの編集者のお世話になって中国で講演させていただいた。新幹線事故の後なので,いろいろな方から乗り物に注意するようにというお言葉を授かって訪中した。

 北京空港でのお迎えはAudi A8,安くて1000万円のお車。座った後席が広すぎて所在無し。到着したホテル前にはランボルギーニがBMWやベンツと並んで駐車していた。毎日,モーターショー状態である。

 講演も終わり,帰りもA8かとホテル前で待つも,待ちぼうけ。慌てて,タクシーで北京空港に向かった。チェックインして出国審査に並んだ当たりで不穏な空気。審査場から乗り場を結ぶ電車が停止しているとのこと。乗り場まで案内もいないところを進んでは止まり,止まっては進む。結局,お土産を買う余裕もなく搭乗時間ぎりぎり搭乗口に到着した。その後,離陸まで機内で1時間以上待たされた。

 数日前にも上海で地下鉄事故があったそうである。だから駄目だと中国批判を展開したい訳ではない。海外から見れば、福島原発問題みずほ銀行のATM停止JR東日本新幹線の輸送障害JR西日本の福知山線の暴走と日本も怖い国である。

 ここは「システム考」。人類が作ったり,集めたりしたものを、使いこなせなくなっていることを論じたい。既に,情報も,機械も,環境も,人類の理解を越える規模や複雑さに達していることを素直に認めよう。間違いは必ず起きる。PDCA、Plan,Do,Check,Action。大事なことは,どうカイゼンするかである。大量生産方式にカイゼンを持ち込んだことが日本のイノベーションである。

 ご承知のようにPDCAはイノベーションに留まらず文化でもある。Plan, Doに合わせて問題点を公表する体制,その対策を論じる体制,そして対策を実行する体制。一度の間違いは許容しよう。同じ間違いを繰り返すのは大バカ者である。その観点から見ると,隣国も自国もまだまだ。まずは,問題点は隠してはいけない。もって,自戒としよう。

 さて,問題点を隠ぺいしないとして,本題に戻ってCheck,Actionは実行可能なのだろうか。1千万行とか1億行とか言われるソフト。数万点と呼ばれる部品。ギガビット,ミリセカンドで交換される情報。家電に自動車,太陽電池に風力発電,コジェネ。それらが連携したスマートシティ。ヒューマン・セントリックと言われているが,人はスマートシティを理解できるのだろうか。情報化された一台の家電も,自動車も,そして一軒の家も,すべて人の理解を越えているように思える。

 消費者が理解できない。それは共通認識であろう。エンジニアも理解できていない。これは私の認識である。作っている人,維持・管理している人も分からずに作業をしているように思える。やり方を根本的に変えざるを得ない所まで,人類はシステムを大規模に,そして複雑化しているように思う。自戒にとどめる時期ではない。システム化自体にイノベーションを必要としているように思う。